研究課題/領域番号 |
20K13288
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
左地 亮子 (野呂) 東洋大学, 社会学部, 准教授 (50771416)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ジプシー/ロマ / ペンテコステ派 / キリスト教 / 文化人類学 |
研究実績の概要 |
本研究は、マイノリティの宗教実践を共同体主義として警戒する声が高まるフランス社会において、ジプシー・ペンテコステ運動を例に、マイノリティの宗教実践が、主流社会が標榜する普遍主義とせめぎ合いつつ、共鳴する側面を解明することを目的とする。 本年度は、夏季にフランスにて長期間の現地調査を実施し、フランスのジプシー福音宣教会が開催する全国大会にて参与観察と聞き取り調査を行った。コロナ禍の期間に中断されていたこの大規模集会を調査することで、フランスのジプシー・ペンテコスタリズムに関する最新の情報を得ることができた。また、大規模集会以外にも、マヌーシュを始めとするジプシー信徒の居住地を訪問し、信仰をめぐる日常的な実践や語りに関する情報を収集した。 これら現地調査と並行して、学会全国大会において研究課題に関わる発表を行った。さらに、これまでの研究の集大成となる論文を学会誌に投稿した。 コロナ禍で現地調査を行うことができない期間が続いたもの、研究期間4年目を終えて、本研究課題を解明するための情報と分析が大方そろった。世俗化するフランス社会においてジプシー・ペンテコステ運動は、独自の信仰と共同体に閉じこもるセクトとして捉えられてきたが、この見方は、ジプシー福音宣教会が主催する全国集会や移動集会に対する報道や一般市民の反応から確認できた。さらにコロナ禍を受けてこの宗教運動が、「市民社会に対立する共同体主義」の汚名をかぶる状況が一層強化された事実が判明した。だがその一方で、ペンテコステ派信徒の信仰実践や神との関係をめぐる語りを調べることで、信徒が民族を超えたキリスト者としての自己、キリスト教の「普遍」を強調する様子も明らかになり、フランス主流社会とペンテコステ派ジプシー信徒の間に横たわる視点や理解の差異が露わになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は予定していた3月の現地調査ができなかったものの、2度の渡仏により、研究の成果をまとめるために必要な情報の大部分を得ることができ、研究の集大成となる論文も準備することができた。
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今後の研究の推進方策 |
24年度は、補足調査を行い、学会誌投稿論文を完成させ、成果を広く公表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
4年の研究期間全体で感染症拡大による渡航制限が生じ、現地調査のスケジュールの変更を余儀なくされたため。残額は、次年度に行う現地調査にて使用する予定である。
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