研究課題/領域番号 |
20K13293
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
大澤 隆将 金沢大学, GS教育系, 講師 (40795499)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | スマトラ / インドネシア / 熱帯泥炭地 / エスニシティ / 先住民 / 生業 |
研究実績の概要 |
本研究は、インドネシアの東部スマトラに暮らす諸民族集団の文化・歴史に関する比較研究を通して、東南アジアにおける民族の分枝・形成と維持・存続の歴史過程を追究するものである。2023年度の研究活動は、これまでの現地調査を基にした文献研究、インドネシア国リアウ州において短期の現地調査、また1件の国際セミナー・ワークショップを主催した。 まず、文献研究については、インドネシア国リアウ州を流れるカンパール川中流域の沿岸部に暮らす先住民集団プタラガンの人びとの生業に焦点を当て、彼らの生活空間である熱帯泥炭地帯をフロンティア空間の概念と結び付けながら、分析を行った。この成果は、国立民族学博物館の共同研究の成果本である共編著書籍に採録される予定である(2024年度中に公刊予定)。 次に、現地調査については、2024年2月末から3月半ばまでの2週間にわたり、リアウ州での現地調査を行った。この出張では、カンパル川流域のプタラガンの人びとが暮らすランタウ・バル村と、同州ベンカリス島のスク・アスリの人びとが暮らすスカ・マジュ村を訪れ、聞き取り調査を行った。 2024年3月には、プタラガンの共同体で新慣習長に就任した人物と、現地パートナーである現地NGOの代表をスピーカーに迎え、研究者向けの国際セミナー/ワークショップ(オンライン)を開催した。この中で、プタラガンの人びとの暮らしと将来の見通しについて、より詳細な話を聞くことができた。 なお、2023年度における本研究課題と関連した研究業績は、国内研究会での研究発表1件と国際セミナー/ワークショップの主催が1件であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年4月の採択直後にコロナ・パンデミックに見舞われ、一昨年夏まで本研究の核となる現地調査や共同研究を十分に行うことができなかった。それ以降、アメリカの研究者との面会打ち合わせと短期間の現地調査を行った。しかしながら、採択時に所属していた総合地球環境学研究所の任期終了や金沢大学国際基幹教育院への採用といった所属や本務の変化が重なったため、当初予定していた国際会議を開催できなかった。さらに、本年度は、育休を取得予定であり、特に現地調査に従事するための十分な時間を確保できていない。このような理由で、当初の予定より遅れた形で進行している。 いっぽうで、これまでの現地調査を文献研究を用いて発展させる研究については、順調に進行している。2023年の3月には共編著書籍であるLocal Governance of Peatland Restoration in Riau, Indonesia: A Transdisciplinary Analysis(Springer)を公刊した。このなかでは、カンパル川の沿岸の一集落であるランタウ・バル村に暮らす先住民プタラガンの人びとの生業としての漁業、土地空間利用、また歴史的な国家や周辺集落との関係性について民族誌的研究を行った。また、本年度中に、上述したフロンティア空間とプタラガンの人びとの土地空間利用に焦点を当てた研究が、共編著書籍として公刊される予定である。 これに加え、本科研費を利用して、国内・国際学会の発表を7回行っている。この中では、上記のプタラガンの他、同リアウ州で暮らすアキットやスク・アスリの人びとのエスニシティに焦点をあてた研究の発表を行った。本研究課題の主題である生業や資源利用との関係性のみにとどまらず、その他の要素である宗教や生活空間との関係性についても考察を行った。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる本年度の研究の目標は大きく2つある。1つ目は、当初の研究予定の目玉であった国際会議を開催することと、2つ目はこれまで積み重ねてきた研究を統合させる方向に向かうことである。 当初より予定していた国際会議の開催は、2月末から3月をめどに開催する予定である。具体的なスケジュールとしては、8月中に国際会議の付託条項(Terms of Reference, ToR)を作成し、インビテーションとともに参加予定者にサーキュレートする。8月から12月までは、現地のカウンターパートとなるリアウ大学および現地NGOとの調整を行い、2月から3月に開催する予定である。 これに加えて、プタラガン、スク・アスリ、アキットの人びとに関してこれまで行ってきた研究内容を総合し、国際会議で得られた成果と統合していく予定である。国際会議の呼びかけの過程でプタラガンやスク・アスリ、アキットの研究の総括を行い、この内容を国際会議後にそこで得られた成果と統合する。この作業を3月一杯をめどに完了させそれを中間報告とする。来年度以降に、この内容を深化させた形で論文や書籍の公刊を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍に伴う出張制限と勤務先の移動により、予定通り予算執行ができていない。本年度中に国際会議を開催し、予定通り予算を執行する予定である。
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