研究課題/領域番号 |
20K13299
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
李 妍淑 琉球大学, 人文社会学部, 准教授 (90635129)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 親子法制 / 面会交流 / 父母の離婚・離別 / 高葛藤 / 家族法 / 東アジア / ジェンダー / 家族の多様性 |
研究実績の概要 |
本年度は、研究の3年目にあたる年で、本来であれば、研究成果を発表することが予定されていたが、昨年度に続く新型コロナウィルス感染拡大により調査実績をあげることができなかった。そのため、本年度も国内外における網羅的な文献や資料の収集・検討を中心に研究を進めてきた。具体的には、以下の通りである。 ①これまでと同様、中国語の学術論文データベース、裁判例情報公式サイト、各省庁発行の統計資料などを用いて、最新の情報収集を行った上で、制度や実態(の変容)について再確認・再検討の作業を行なった。そして、台湾や韓国についても、引き続き、国会図書館のデータベースや各省庁発行の統計・調査資料などを中心に収集・検討を行ない、比較法の観点から、中国親子法制にどういった特徴があり、その特徴によってもたらす実務及び実態への影響はどういったものがあるか、そもそもなぜそういった特徴を有するのかなどに関する検討作業を継続してきた。 ②中国・台湾・韓国における親子法制の専門家(法学者、法曹)、隣接領域の専門家(社会学者、心理学者など)、さらに当事者を支援する民間団体などを対象に、オンライン上の対談やミーディングを行い、多方面からの情報収集を試みたものの、時間的・空間的制限により得られた成果は極めて限定的なものとなった。とはいえ、継続的な情報収集を通じて、各国の制度や実態(の変容)に関する理解がより深まり、今後現地調査を実施するにあたって、必要不可欠な基礎知識を不完全ながら得られたことは間違いないので、今後も継続的にコンタクトをとるようにしたい。 ところが、令和4年度も新型コロナウィルス感染状況は一向に好転がみられず、現地調査のための出張を中止せざるを得なかったため、当初予定していた対面による意見交換や情報収集を行うことができなかった。この点については、来年度に極力補えるように研究体制を整えたい所存である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度も、昨年度と同様、新型コロナウィルス感染拡大に伴い国内外の出張中止が余儀なくされ、現地での対面による意見交換や情報収集を行うことがほぼ不可能だった。そこで、オンラインに切り替え、先方の専門家とコンタクトを取り、ミーティング(数回)や研究会(新アジア家族法三国会議等)に参加したが、時間的・空間的制限により得られる情報は当初予定されたものと比べて極めて限定的なものになっている。例えば、現地調査を行い、対面による意見交換は、文献研究を補う役割を果たせるため、研究の客観性を確保する上で必要な研究方法の一つであるにも関わらず、実現できなかった。したがって、研究の進捗状況としては、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、2023年度を最終年度とする。2023年度は、新型コロナウィルス感染症の5類感染症移行に伴い国内外の移動が緩和されることが予想されるため、外国での現地調査が可能となる見込みである。これまでの文献研究実績に、現地調査の結果を加え、本研究の成果発表に向けて体制を整えていきたい。具体的には、DVや虐待被害を受けた親と子が関わる面会交流における(親子)法的課題と解決策を整理した上で提言し、研究成果を社会に還元する。そのために、次のように進めていく。 ①文献研究と成果を整理する。前年までの文献研究実績の整理と中国・台湾・韓国での最終調査を終えた後、DV被害者や虐待された子が面会交流に関わる際の、親子法制の課題と解決策を論文としてまとめる。 ②成果を発表する。「中国における「高葛藤」事案と親子法制」と題した報告を国内外の関連学会で行い、本研究で得られた理論的成果が学界と実務に波及し、広く共有されるよう努める。続いて、本研究の初年度から得られた知見をまとめ、所属大学の「民法特殊講義」、「ジェンダーと法」の講義で学生に教授するとともに、市民向けの公開講座などを通じて、引き続き広く社会へ発信する。 そのためには、上記の成果発表に向けた準備を進める上で、中国家族法関連問題は比較法専門家の先生方に、DVや虐待が関わる問題はジェンダー法・心理学・社会学等の専門家の先生方に助言を仰ぎ、研究の精度を保ちつつ、奥行を広げる。また、研究成果の発表を社会に発信する重要な機会と捉え、深刻な親子問題を解決するためのプラットフォームの提供の可能性について探る。さらに、面会交流に伴う「高葛藤」を念頭に、本研究を通じてソーシャルワーカーや第三者の監督義務づけなど有効な政策提言を行い、家族法改正論議に理論面から寄与することを試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの感染拡大により、2022年度も国内外の移動が制限されたため、国内外の出張が実現できず、現地での対面調査を中止せざるを得なかった。それにより、次年度使用額が生じた。この分の研究費については、次年度に繰り越すことにし、2023年度の研究計画にある国内外出張のために使用する。
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