本研究の目的は、異なる善き生の構想に対し国家は中立的でなければならないという中立性の要請の理論的根拠を再検討し、グローバル化という現代的状況に対して中立性が有する含意を明らかにすることにあった。中立性と一定の卓越主義との両立を試みているクレイマーの鼓吹的卓越主義を検討した上で、それが抱えている哲学的難点を明らかにし、代替的構想として、セシル・ラボルデの議論を参照しつつ、中立性についての分解アプローチを提示した。これによれば、中立性は実のところ単一の規範的原理というよりも複数の規範的要請の束であり、そうした規範的要請を充足しているならば、卓越主義的政策は許容されると論じた。
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