本研究課題は,奴隷制廃止後のアメリカ社会において,アメリカ合衆国憲法修正第13条(以下「修正第13条」と記す。)がいかなる規範として立法及び訴訟に反映されたのかを明らかにすることである。この目的を達成するために,本研究課題では【課題1】修正第13条を執行する立法の調査,【課題2】修正第13条が直接的・間接的に問題となった憲法訴訟の分析という2つの具体的な課題を設定している。 2023年度は,当初2021年度に予定していたアメリカ連邦議会図書館への資料調査出張を行い,上記【課題1】及び【課題2】に関する1次資料と2次資料を収集した。また【課題2】において分析しているSlaughters House Cacesの舞台となったルイジアナ州ニューオリンズにて,訴訟当時の1次資料の調査及び収集することができた。 さらに,2023年度は最終年度にあたるため,これまで行ってきた分析を踏まえ,修正第13条(及びそれに由来するとされる日本国憲法第18条)の観点から「現代的奴隷制(modern slavery)」をいかにして問題化できるのかを検討した。そして,アメリカにおいては,強制労働によって生産された商品の輸入を禁じる1930年のTariff Act,Federal Acquisition Regulationsや,Trafficking Victims Protection Reauthorization Actを通じて,すでに連邦法レベルで強制労働に対する規制を行ってきたことが明らかとなった。また,カリフォルニア州がTransparency in Supply Chains Actを2012年に制定し,独自に強制労働(ないし人身売買)に対する規制を強化しており,こうした州レベルでの取り組みも参考になることが明らかとなった。
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