研究課題/領域番号 |
20K13303
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
加藤 絢子 九州大学, 比較社会文化研究院, 特別研究者 (40724034)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 先住民族 / 漁業権 / 国籍 / 法文化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、樺太先住民が日露二つの帝国統治を経験する過程で、彼らが臣民として統治者に要求した「権利」のかたちとその内容を、彼らの主要な生業のひとつであった漁業と、1932 年に付与が決定する日本国籍という二つの側面から分析し、日露統治下にあった樺太先住民が認識していた、帝国臣民としての「権利」の内実を明らかにすることである。今年度は先住民側の近代法上の「国籍」に対する認識と比較するために、日本政府側および法学者らにおける日本帝国内の臣民の法的身分に関する議論を整理した。具体的には、植民地および委任統治領も含めた帝国内の臣民の分類と、その分類の基準となる法観念について調査した。また、この議論に関連して、戦前戦後における樺太先住民の国籍と戸籍の関係性についての法学者・法実務者らの議論も併せて調査した。以上の調査結果については、日本統治下における樺太先住民の法的地位に関する研究成果をまとめた書籍に一部収録した(2022年3月刊行)。くわえて日本の先住民の事例を世界史的な枠組みで考察するために、他国における植民者・先住民間の法的関係を調査した。 また上記の調査に関連して、2021年6月にコペンハーゲンで行われた国際学会「グリーンランドとデンマーク 1721-2021」で、樺太先住民とグリーンランド先住民の戦後を土地と資源の条件から比較した研究発表をおこなった。さらに本学会の延長的な勉強会として、近代法と先住民の関係に関する情報交換会を定期的にオンラインで実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年はロシア帝国統治時代のサハリン島における漁業関連の史料をロシアで閲覧する予定であったが、コロナウィルス感染拡大の影響もあり実施することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
ウクライナ情勢およびコロナウィルス感染拡大の影響からロシアでの史料調査が困難な状況となったため、ロシア帝国時代の漁業政策および諸規則に関する史料をロシア以外の地域から入手できるかどうかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス感染拡大の影響を考慮し、国内および海外における資料調査を次年度に延期したため、当該調査のための旅費や文献複写料などを次年度に使用する計画とした。
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