研究課題/領域番号 |
20K13309
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研究機関 | 小樽商科大学 |
研究代表者 |
齋藤 健一郎 小樽商科大学, 商学部, 准教授 (60756881)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 時際法 / 遡及効 / 時間的適用範囲 / 時間的適用関係 / 法と時間 / 行政法 / 経過規定 |
研究実績の概要 |
本研究の2年目は、初年度に取り組んだフランス法学説による時際法の分析モデルについて研究を継続するとともに、日本法の分析にも取り組んだ。フランス法の研究については前年度からの継続であることから、以下では日本法の研究の成果について概要を記す。 日本法の研究については、日本の法令・裁判例の中から時際法の論点を取り上げて整理・分析を行うことを課題とした。第一に、個別の裁判事例や立法例(新規のもの、及び以前のものの中で重要な例)について、調査を行い、多様な例の収集・整理を行った。第二に、過去の裁判例の包括的研究を行った。これについては、『行政法研究』43号に「行政法の時に関する効力」と題する論文を公表した。この論文では、日本の裁判事例を網羅的に取り上げて、法令の時間的適用関係の画定について法令に経過規定がない場合に、適用の有無がどのように判断されているのかを実証的に整理分析した。すなわち、法令をどのような場合・どのような対象に適用すると遡及効が生じるのか(遡及効はこれを認める明文規定がなければ原則として許されない)、逆に、過去の事実に法令を適用しているように見えて、厳密にはそうではなく即時効が生じているにとどまり適用が許されるのはどのような場合か、の類型化を試みることにより、上記課題の整理分析を行った。 なお、日本法の研究としては、この他、新法を制定するにあたって、これにより影響を受ける既存の者の地位に配慮するために新法の適用を制限するという場合があり(これを旧法存続という)、これに関する日本法の基本的な考え方(立法例・裁判例)の整理を行い、法律時報93巻8号に「行政法と時間 : 時際法」と題する論文を公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
理由は主に、初年度に行ったフランス法の研究成果についての論文の執筆・公表が達成できていないことによる。フランス法学説の整理分析はすでに行ったが、同時並行で、時際法に関する著書の翻訳にも取り組んおり、これを終えてからその成果も踏まえて論文執筆に取り組みたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
【現在までの進捗状況】で記したとおり、フランス法研究については、3年目も継続し、論文の執筆・公表を目指す。また、2年目において調査を行った日本の個別の裁判事例や立法例についても、研究ノートの形で整理をし、公表することを目指す。 また、3年目においては、本研究の仕上げとして、フランス法研究から示唆を得た分析モデルと日本法との比較分析を行うこととしたい。分析モデルが日本法において法令の時間的適用関係を分析するための理論枠組みとして妥当するか否かを検証し、日本法に妥当する分析モデルの提示を試みることを目指す。もっとも、理論面のみでの研究ではなく、実践的な妥当性(現実の立法実務・裁判実務を説明できるモデル、実践的な問題解決の基準になりうるモデル)を目指し、日本の立法例・裁判例等を踏まえて比較分析を行うこととするため、あらかじめ、上記の論文の執筆を優先して取り組むこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
主に、国内学会がオンライン開催となり、また海外渡航が難しかったため、出張旅費が不要となったため残額が生じた。次年度、国内学会や海外渡航が可能となった場合には、積極的に参加や調査を行い、残額をこれに充てることとする。
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