研究計画においては、最終年度(令和4年度)は、令和3年度においてなした口頭報告・調査において得られた成果を踏まえ、令和2年度の研究成果を拡充し、本研究を総括する作業を行うことが予定されていた。 この研究計画を踏まえると、令和4年度の研究実績および研究期間全体を通じた研究実績は次のように総括できる。 (1)「行政法における組織規範の法的性質(6・完)」という論文を公表し、この論文の中で本研究の成果を確認することで本研究を総括した。具体的には、本研究の設定した問題に対する暫定的な解答を得た。すなわち、「組織規範は裁判規範性を持たない」、「組織規範は自然人の行為を行政主体へと帰属させる」という2つの性質を組織規範は持ち得ること、しかしいずれの性質も組織規範の特質ではないと考える可能性があること、を示した。 (2)東京大学公法研究会において、「行政法における組織規範の法的性質(1)~(6・完)」について西上治准教授(神戸大学)による書評をしていただく機会と、この書評に対し研究代表者によるリプライを行う機会をいただき、参加者各位からのご指摘も相まって、本研究に残された課題を確認することができた。具体的に課題を1つを挙げれば、行政行為の存在が取消訴訟の訴訟要件となるかという問題について、不存在確認訴訟の存在意義も踏まえて考察する必要性が課題として確認できた。 (3)本研究の観点から、権限の委任論・行政契約論に関して新規性のある研究成果を獲得できる展望を得て、公表のための準備作業に着手することができた。
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