研究課題/領域番号 |
20K13311
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
小牧 亮也 岐阜大学, 地域科学部, 助教 (90836040)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 水道事業の民営化 / フリント水道危機 / 民主的統制 |
研究実績の概要 |
日本で水道事業の民営化を促進する法改正が行われたことを受けて、水道民営化を支える法制度の問題性を民主的統制の視角か明らかにする目的で、民主的統制の欠如が主たる要因となって深刻な水道水汚染が発生したアメリカのミシガン州フリント市の事件(以下、「フリント水道危機」とする)の調査を行った。 その前提として、私がこれまでの民営化研究において重視してきた、市民社会が有する規制力を引き出すための理論枠組みを、水道民営化論に接続するための理論的な整理を行った(「民営化に対する憲法的統制――水道民営化の憲法的考察に向けて――」憲法理論研究会編『憲法学のさらなる開拓』(敬文堂、2020年))。 そのうえで、フリント水道危機を、その背景となった法制度に焦点を当てて、民主的統制の視角から分析し、さらに、同視角に基づく分析を、日本の水道民営化を支える法制度に応用するたの理論的な整理を行った(「水道民営化の憲法的考察――フリント水道危機(Flint Water Crisis)を手がかりに」名古屋大学法政論集286号(2020年))。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査・分析の対象が主として法制度にとどまったものの、フリント水道危機の本格的な考察に向けた理論的な整理はできたと思われる。また、同危機の分析に際して採用した民主的統制の視角が、日本の水道民営化を支える法制度の分析においても一定程度有効であることも示すことができた。 以上の成果については、論文として公表することができた。したがって、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
フリント水道危機の調査・分析の過程で、フリント市が有する特殊な社会構造(アフリカ系・貧困層の人口割合が他地域に比べて大きい)が、同危機において重要な位置を占めることが明らかになった。したがって、法制度に焦点を当てた分析を行うにしても、こうした特殊な社会構造をどのように考慮に入れるべきかについては、さらなる考察が必要になる。 当初は、2021年度に、現地での聞き取り調査を行う予定であったため、そこでフリント市の社会構造に対する理解を深める機会を得ることも可能であったが、新型コロナウィルス感染症の影響のため現地調査は困難であることが予想される。 その場合は、文献を利用した調査を引き続き行い、2022年度に現地調査を行うことも視野に入れる。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ予定どおりの使用額であったが、若干の未使用額が発生した。その分は、次年度の物品費に充てる予定である。
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