研究課題/領域番号 |
20K13311
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
小牧 亮也 岐阜大学, 地域科学部, 助教 (90836040)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 水道事業の民営化 / フリント水道危機 / 地方自治 |
研究実績の概要 |
フリント市で発生した水道水汚染事件(以下、「フリント水道危機」とする)の調査を引き続き行ったが、今年度は、同事件の「回復」プロセスに焦点を当てて分析を行った。 同事件は、アフリカ系(その多くが貧困層でもある)が住民の多数を占める市で発生したものであり、事件の被害は、特定人種に集中して生じた。そのため、同事件は、「環境的不正義」の事例として把握されているが、被害の「回復」にあたっては、全米の注目を浴びたこともあり、地域を超えた支援を受けての裁判運動や専門家の告発等が力を発揮した。 以上の回復プロセスは、アメリカが有する市民社会の力によるものといえるが、他方で、フリント住民による自治が制度として十分に確保されていれば、被害を未然に防げていた可能性も想定できる。そのため、同事件は、水道のような住民の生命に直結する公共サービスにおける地方自治の重要性を示したものと理解できる。 水道事業における地方自治の重要性は、日本においても重視すべき点であり、日本の水道民営化における地方自治の重要性を示す業績を発表することもできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた現地調査は実施できなかったものの、フリント市が有する特殊な社会構造をふまえた分析の視角として、地方自治の重要性を提示できた点は成果といえる。以上の成果については、論文および概説書の一部の章として公表できた。したがって、「おおむね順調に進展している」と評価できると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
フリント水道危機の調査の過程で、「水への権利」論への関心が高まっていることが明らかになった。そこで、「水への権利」論の構造を明らかにしたうえで、同理論がフリント水道危機の分析にとって有効か否かを検証したい。 「水への権利」論は、日本の水道民営化反対運動においてもしばしば言及されており、日本の水道民営化に対する分析視角にもなり得る点で、同理論は注目に値するものと思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は、今年度に海外調査を実施する予定であったが、新型コロナウィルス感染症の影響で実施できなかったため、その分の費用を次年度使用額としたい。 現状では、次年度も海外調査は困難であると思われるため、可能であれば国内の水道民営化の実施状況の現地調査(例えば、宮城県)を行い、次年度使用額をその費用に充てたいと考えている。また、最新の洋書が当初の想定よりも多く出版されているため、その費用にも充てる予定である。
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