前年度着目した、フリント市で発生した深刻な水道水汚染事件(以下、「フリント水道危機」とする)の「回復」プロセスにおいて、「水への人権」が主張されていることを発見した。そこで、「水への人権」が水道サービスの維持・回復においていかなる意義を有するのか、さらには、それが水道民営化論議においていかなる意義を有るのかを解明する目的で、アメリカにおける「水への権利」の議論動向の調査・分析を行った。 その結果、「水への人権」侵害とみなされ得るケースが、当該地域が抱える特殊な社会構造に起因して発生していることが明らかとなった。 この点は、フリント水道危機において顕著であるが、歴史的経緯によりラテン系住民が多く存在する(同住民の多くは貧困層でもある)カリフォルニア州でも、全米初の「水への人権」立法が2012年に成立しており、「水への人権」論の分析は、当該地域の社会構造に即して行われる必要があることが明らかとなった。
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