研究最終年度である本年度は、地方公営企業が担う上下水道分野における公私協働において利用される公私協働契約が、どのような契約内容を保有すべきか、という実務上の問題について、方向性を示し、備えるべき契約内容の一端につき、特に次の2点を明らかにした。第1に、各公私協働は公・私の責任明確化を任務とすること等から、各公私協働る契約の中核部分については、本質的な差違が存在しない。 第2に、各公私協働契約は、権利・義務の譲渡の原則禁止、事業契約締結に関する地方公共団体の留保権、第三者利用に関する地方公共団体の承認権、モニタリングに関する専門家・外部機関の活用、災害・事故対応に関する方法、事業自体に起因する住民運動・訴訟に対応する地方公共団体の義務、地方公共団体の職員の受託事業者が行う研修等への参加権、VE提案権、等の各種権利・義務を公私協働契約において規律すべきである。 この他、エンドユーザーと水道事業者が締結する給水契約に関する諸問題をどのように検討すれば良いかにつき検討した。その結果、水道事業者の債務不履行に当たっては、民法だけでなく国家賠償法1条・2条が問題になること、民法・国家賠償法の競合につきなお検討すべきことがあることを明らかにした。 以上のような研究を踏まえ、研究期間全体を通じて以下のことを明らかにした。あらゆる行政契約は、契約の一方当事者が行政主体であることから、常に憲法上の諸原則(比例原則、平等原則等)が問題になる。その上で、公私協働契約は、事例毎に若干の差があるものの本質に差はなく、上記した事項について明確に定める必要がある。給付契約では、行政主体に給付義務が課されている場合、給付義務が消滅する場合は非常に限られた場合であり、それ以外の場合に給付が出来ないときは債務不履行になること、その際には民法だけでなく国家賠償法も問題になることを明らかにした。
|