研究課題/領域番号 |
20K13317
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
前硲 大志 山口大学, 経済学部, 講師 (50845336)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 憲法 / 議会法 |
研究実績の概要 |
令和2年度の研究成果として、前硲大志「会派案分比例原則の憲法的基礎づけ(1)(2・完)―ドイツ連邦憲法裁判所判例における理論構成を素材として―」山口経済学雑誌69巻3・4号(2020年11月)39-70頁、同5号(2021年1月)41-71頁を公表した。また、関西憲法判例研究会等の研究会において、このテーマに関係する報告を実施した。 上記の研究成果は、議会内部の組織構成、特に委員会等の合議体の人的構成に関する「会派案分比例原則」について、ドイツ連邦議会に関する実定法(基本法・議事規則・選挙法)や憲法判例、学説を手掛かりとしながら、憲法学の観点から省察したものである。ここでは、議会の機能性や民主制原理における民主的正統化の要請といった憲法ランクの抽象的要請が、選挙法や議事規則(特に会派に関する定め)などの下位規範によって形成される状況を前提として、より具体的に会派案分比例原則を導くという規範構造を示した。 上記の研究成果は、民主制原理という憲法原理が議会法領域における会派案分比例原則をどのように導くかを明らかにするものであり、本研究課題の目的である「憲法原理が『議会法』領域においてどのように展開されうるかを解明すること」に資する意義を有する。とりわけ、上記の研究成果を通じて、憲法と下位規範(議事規則や選挙法)との連関的考察の必要性が示された点には、議会法領域における憲法原理の展開可能性を探求するにあたっての方法論を提示するという重要性がある。 また、研究実施計画上、令和2年度はドイツ連邦議会における合議体の人的構成に関する研究を遂行することとしており、上記研究成果はその計画に基づくものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度においては、議会の合議体の人的構成に関する①会派案分比例原則と②多数派原理の2点について研究を実施する予定であったが、①についての研究成果を公表するには至ったものの、②についての研究成果を公表するには至っていない。理由の一つは、①に関する議論の展開が、当初の予定よりも大がかりなものとなり、研究成果の公表に時間がかかったことにある。また、COVID-19の影響により、資料収集(特に洋書)に予定よりも多くの時間を要し、研究資料を十分に読み解く時間的余裕が乏しくなったことも、進捗がやや遅れている理由の一つである。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度においては、当初の計画では令和2年度中に研究成果を公表する予定であった議会の人的構成における多数派原理に関して、研究を引き続き遂行する。また、これと並行して、ドイツ連邦議会における議員の行為規範に関する研究を、当初の令和3年度の計画通り遂行し、その後に、両院調整機関の権限に関する研究に着手する。
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次年度使用額が生じた理由 |
まず、COVID-19の影響により、東京・大阪・京都等の大都市圏に赴く予定であった資料収集や学会・研究会出席のための旅費に未使用分が生じた。また、同じくCOVID-19の影響により、特に洋書の輸送に多くの時間を要することとなり、年度内に到着しない見込みの書籍発注を取りやめるなどによって、物品費にも未使用分が生じた。 2021年度の使用計画としては、まず物品費につき、主に日独公法学関連書籍の購入を予定している。また、旅費に関しては、2021年度もCOVID-19の状況を見ながら、国内外の学会・研究会がオフラインで実施される場合の旅費や、国内外への資料収集(主に洋雑誌掲載論文の収集)に際しての旅費としての使用を予定している。
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