研究課題/領域番号 |
20K13318
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
田中 晶国 九州大学, 法学研究院, 准教授 (50782950)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 推計課税 / 連邦法と州法 / ニュー・テクスチャリズム / 経済的意義 / 租税法と私法 |
研究実績の概要 |
今年度は主として推計課税の立証責任制度の前提となる米国租税法上の課税要件の設定および法適用の問題に焦点をあてて研究を行った。米国連邦最高裁では制定法の解釈において、租税法特有の議論ではないが、その法解釈手法について、英米法における古典的テクスチャリズムの生成と没落、そして、近年におけるニューテクスチャリズムの勃興など動態的な姿をみせており、極めて興味深いものがある。その動態的変容は、米国における内国歳入法典の解釈・適用にも影響を与えている。我が国では、租税法の適用過程において、私法上の法律関係及び事実関係を取り込むことが行われているが(二層的構造)、米国連邦租税法の適用においても、州法の取り込みは行われている。ただし、連邦と州という国家体制の権限分配が我が国とは大きく異なる関係上、個別の州法上の法律効果に対して、全国的な課税の統一・均一化が重視されており、連邦最高裁の立場は、連邦租税法が州法の規律に優先するとの理念に従っていると理解されている。この態度は、近時の裁判例においても同様に踏襲されており、米国租税法においては、州法上の法律関係のラベルとその法律効果とを分けて、ラベルではなく、あくまでその法律効果に基づく経済的意義を直接に連邦租税法に取り込む場面と、連邦租税法自身が州法上のラベルを要件として採用する場面において、次元の異なる法解釈・適用の作業が行われている。また、連邦租税法の制定趣旨をテキストの解釈においてどの程度参酌するかについては、歴史の過程において変動が存在しているが、連邦最高裁では、一貫して委員会報告書への高い信頼がうかがえる。これは、超党派でありかつイデオロギー的色彩の弱い税制合同委員会が果たす、租税立法過程における特別な役割と連邦最高裁判所のその役割への理解の結果であろうと推測されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題の進捗のためには、米国税務訴訟における説得責任(burden of persuasion)、証拠提出責任(burden of production)や租税債権の決定(determination)にかかる適法性の推定を踏まえた上での比較・検討が必要である。現在のところ、我が国の推計課税の特質についての調査検討は、ひとまず一時的な結論を導出することができ、また、米国租税法上に係る研究進捗についても、今後の研究の土台となる租税法の解釈・適用に関する研究を進めることができたことから、おおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究については、特に米国租税法における所得の認定過程により焦点をあてて検討を進める必要があると認識している。特に、統計的情報を用いる推計について焦点を当てて研究を進めていきたい。また最終年度に向けて、我が国における推計課税との比較についても検討を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度を大きな配分額としていたが随時必要資料等を購入していることが理由であるが、最終年度までに利用できる予定である。
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