研究実績の概要 |
今年度は、1998年にIRS再編改革法の一環として導入された立証責任を転換する規定である内国歳入法典7491条についての制定後の動向についての調査を行った。本規定の立法趣旨は、課税庁と納税者の不公平の解消とされているが、本規定による立証責任の転換のためには、立証のための法典が定める要件の遵守や、納税者による記録の保存、調査への協力など厳格な限定が付されている。制定初期において、納税者が本規定の適用を主張したHigbee v. Commissioner, 116 T.C. 438 (2001)では、本規定は法典・規則に基づく所定の項目に関する立証の要件を上書きするものではないことが確認されており、納税者は制定以前と同様に法的に設けられた要件を立証する必要があることが指摘された。また、その適用においても、「信用できる証拠」の解釈についていくつかの裁判例が存在している。そのほか、裁判例には、本条項は証拠の優越が認められないような証明力が同程度な事例においてのみ意味を持つことを示唆するものもあった(Knudsen v. Commissioner, 131 T.C. 185 (2008), Schank v. Commissioner, T.C. Memo.2015-235)。このようなことから、制定後現在までにおいて、7491条によって納税者が有利となったような事例はほとんど見当たらず、本規定による立証責任の転換が効果を発揮する可能性は低いとの指摘も存在している(See, Richard Molina & Bruce W. McClain, Has the Shift in Burden of Proof Really Helped Taxpayers in Litigation?, TAX NOTES SPECIAL REPORTS (Feb. 20, 2023))。
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