研究課題/領域番号 |
20K13319
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
高橋 雅人 九州大学, 法学研究院, 准教授 (30610290)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 情報機関 / テロ対策 / 連邦憲法裁判所 |
研究実績の概要 |
初年度であった2020年度は、①情報機関の諸制度の分析、②民間事業者と警察との連携のあり方と個人情報保護法の関係を分析・整理することとしていた。手始めに、情報機関を指揮する執政としての内閣の司法的統制を見ていたところ、行政の司法的統制についての原稿依頼があり、当初2021年度を予定していた、ドイツにおけるテロ対策を行う執政の司法的統制のあり方について、検討することと、予定内容を変更した。 この研究においては、次のことを明らかにした。もともと、ドイツの連邦憲法裁判所では、日本とちがって、いわゆる「政治問題の法理」を採用せず、執政に対する統制を行うこととなっていたが、近年のドイツの連邦憲法裁判所(とりわけ第2法廷)は、執政領域における、議会の関与を狭め、連邦政府の判断余地を広げている。日本では、ドイツにおいては、連邦憲法裁判所によって執政の統制が行われることで、統制の充実化が図られていると紹介されることが多く、そのような理解が広がっているものの、殊、この情報機関の統制については、むしろ議会の関与を縮減させ、他方で、執政の裁量を広げることを許容する判断が続いていることが明らかとなった。この分析を通じて、2021年度においては、引き続き、ドイツで憲法学として、いかなる対応を行おうとしているかを検討すべきであるし、その一方で、2020年度において本来行うべきであったが不十分なままとなった、日本における情報機関の統制手法を明らかにしていかねばならない。 コロナ禍により、移動が不自由となったため、当初予定していた東京における研究会は、基本的にZoomなどオンラインにより行い、またそれとともに、ドイツにおけるシンポジウムも、憲法擁護庁のシンポジウムなど、オンラインまたはオンデマンドで公開されたものにつき、視聴した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度の当初予定だった、日本の情報機関につき、その組織および手続に関する分析・検討が十分でない状況にあるが、2020年度における原稿依頼に応じるため、2021年度の計画予定だったドイツの情報機関の統制に関する研究を前倒しして行ったためである。他方、資料収集は順調に進んでおり、引き続き、分析検討に必要な資料を集めていく。もちろん、もともと2021年度の研究計画として予定していたドイツの情報機関について、その司法的統制の現状を、2020年度において前倒しして分析することができたので、当初予定の年度の順序が逆転したものの、その点は順調であるといってよいと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度に予定していた日本の情報機関の組織に関する分析・検討と、個人情報の取扱いに関する手続に関する分析・検討を、2021年度前半中に、急ぎ行わねばならない。資料は必要と思われるものについて収集できているので、現在、取り掛かっているところである。 また、ドイツの現状についても、引き続き調査が必要であり、資料の収集および分析・検討を続ける。なお、この分野の資料の最新版については、インターネット上で公開されているものも多く、逐一拾いながら分析を試みていきたい。 現状のところ、コロナ禍により、ドイツでの調査研究が困難であり、今年度の海外渡航も変更する可能性があることを見込んでおかねばならない。もっとも、シンポジウムなど、オンラインまたはオンデマンドで公開しているものも多くなり、その意味では、現地に行かずとも、アクセスすることが可能となっており、そうした技術を活用してきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍によって、旅費を使う機会が得られず、計画よりも執行する金額が少なくなったため。今後のコロナ禍の状況次第で、旅費を使う機会を増やして、研究会や調査に出かけて研究の実効的な発展に資するよう、助成金を使用させていただきたいと考えている。
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