研究課題/領域番号 |
20K13319
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
高橋 雅人 九州大学, 法学研究院, 准教授 (30610290)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 情報機関 / 警察 / 分離原則 / 秘密 / 議会調査委員会 / 安全保障アーキテクチャー |
研究実績の概要 |
本年度は、比較法の視点から検討すべく、ドイツ基本法で規定されている警察と情報機関の分離原則について、検討する予定であった。しかし、検討を始めていくと、日本でかなり紹介・分析が進んでおり、独自の観点から切り込まない限り、屋上屋を架すことになると考えた。そこで、まずは予定通り、ドイツにおける安全保障のアーキテクチャーを調査し、警察の基本権介入の権限拡大と、警察・情報機関の分離原則の軟化の傾向を析出した。その一方で、改めて本研究の独自性としての方法を再考することで次のように予定を若干変更した。 もともと本年度では、警察と情報機関の分離原則から、個人情報の取扱いについての統制方法を探るべくところ、情報機関の扱う情報を秘匿することの問題を取り上げ、その情報の取扱いに対する統制方法を検討することとした。一見、迂遠な考察のようだが、申請者のこれまでの執政研究との接続から考えても、こちらが円滑な方法であるように考えられたからである。 執政にとっては、外交や安全保障など情報を秘匿することが必要な場合に、それが正当化されることもあろうが、その正当性をいかに獲得できうるのか、むしろ、その情報の扱いの統制をかけておかねばならず、ドイツでのその取り組みを調査した。とりわけ、2020年12月16日の連邦憲法裁判所判決での、情報機関に対する議会統制の限定について、検討をするため、ドイツの連邦議会における議会調査委員会の制度の調査を行った。 本年度においても、前年度に引き続き、コロナ禍のため、移動をできるだけ控え、東京等で開催される研究会はオンラインで参加し、またドイツで行われている憲法擁護庁のシンポジウムも、オンデマンドで視聴した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
調査途中で、研究方法に、予定とは異なる独自性を加味しなければ有意義な研究成果が得られないと考え、検討対象を若干変更したことにより、当初より課題が増えたため。ただ、調査自体は、前年度終了後に予定した通りには行えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、予定より調査範囲を広げたため、若干、調べた事柄が獲り散らかっている様子もあり、今後、きちんと整理して、組み立てていく作業を行う。これにより、成果が提出できると考えている。 ただ、この「整理」をする際には、予定と異なり本年度に追加した、<国家による秘密の取扱いに対する統制>の研究をこれまでの研究<情報機関の情報取扱いの統制>に順接的に接続する論理を強化するよう注意する。そして、本研究の後に、この<秘密の取扱い>についての研究を開始できる準備をしておきたい。 なお、本研究については、かなり資料を集めることができたが、依然、必要な資料もあり、引き続き、収集しつつ、分析を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
必要な研究資料の収集を行うことが第一である。 コロナ禍によって、当初予定していた東京での研究会、ドイツでの調査研究という旅費使用計画が実現できておらず、その代わりに、その実地調査に見合うだけの文献資料の収集をする必要があるため、次年度では、その研究を実効的に実現できるよう、助成金を使用させていただきたいと考えている。
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