研究課題/領域番号 |
20K13321
|
研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
城野 一憲 福岡大学, 法学部, 准教授 (10707491)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 憲法学 / 教育法学 / アメリカ憲法 / 教育についての権利 |
研究実績の概要 |
2023年度は、これまでの研究成果を公表するとともに、前年度までに得られた知見に基づいて、「教育についての権利」の機能に関する分析に取り組んだ。 コロナ禍の学校閉鎖(School Closure)は、子どものもつ「教育についての権利」に多大な影響を及ぼしている。アメリカ合衆国と日本における学校閉鎖や統廃合について、関係的で構造的な権利論という視点から分析し、コロナ禍の学校閉鎖は、学習損失に対する補償を求める「請求権(Claim-right)」と、学習環境の一方的な変更を防ぎ、学習の中断を最小化するための「免除権(Immunity)」と関わりうることを明らかにした。この研究成果は、「学校閉鎖と「教育についての権利」(『自由と平和の構想力』所収)として公表した。 また、大学入試におけるアファーマティブ・アクションを違憲としたStudents for Fair Admissions v. Harvard判決(143 S.Ct. 2141 (2023))の分析にも取り組んだ。法廷意見と少数意見の対立軸である、「学問の自由」と関わる組織体としての大学に対する敬譲審査の要否という問題の背後には、不平等の是正や社会の改善の「前衛」としての学校観と、学校は社会の状況の反映に過ぎないと考える立場との相克があることを指摘した。この研究成果の概要は、「平等原則と大学入試における人種の考慮」(日本教育法学会ニュース)にまとめた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度は、引き続き文献と判例の収集と分析に取り組むとともに、コロナ禍の学校閉鎖や、大学入試におけるアファーマティブ・アクションの問題という、「教育についての権利」の保障とも関わる現代の教育法問題についての研究成果をまとめて公表することができた。 しかしながら、権利の本性あるいは機能という観点からの「教育についての権利」の分析には十分に取り組むことができておらず、また、研究全体の総括にも至っていない。海外の学会におけるものを含む学術交流にも取り組むことができていない。
|
今後の研究の推進方策 |
2024年度は、「教育についての権利」の規範構造に関する研究の総括を目指す。これまでに得られた知見をまとめ、所属する研究機関の紀要や学会誌への論文投稿を積極的に行う。アメリカ教育法学会(Education Law Association)の年次総会への参加を通じて、学術交流にも取り組む。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたアメリカ教育法学会の年次総会への参加を見送ったため、次年度使用額が生じた。2024年度は、年次総会への参加を通じて、学術交流に取り組む予定である。
|