研究課題/領域番号 |
20K13325
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
河嶋 春菜 慶應義塾大学, グローバルリサーチインスティテュート(三田), 特任准教授 (10761645)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 公衆衛生 / 医プロフェッション / 職業選択の自由 / 生存権 |
研究実績の概要 |
本研究は、フランス法との比較において、医師の公衆衛生の実施における機能を具体的に理解し、医師職の憲法上の位置づけを明らかにすることによって、医師の公衆衛生上の公共的職責と、医師が職業選択および営業についてうける特別な規制および特権との連関を構造的に理解することを目的とする。 2021年度は引き続きフランスと日本の感染症対策法制の調査および感染症対策における医師の法的位置づけに関する調査を行った。やはり新型コロナウイルス感染症関連の研究が数多く出版されたため、それらのフォローに多くの時間を費やした。 本年度の具体的な研究実績として、例えば、河嶋春菜「COVID-19に対峙する感染症法制の枠組み」国際人権32号(2021年)21-25頁など。また、日本法哲学会において研究報告を行った(2021年11月20日/於オンライン)。フランスの研究者からの批判を得るべく、フランスの学術集会や英語・フランス語での論文執筆にも力を入れた(R. KAGEURA & H.KAWASHIMA."Chapiter 9. Legal and philosophical reflection on traditional medicine and patient’s right to personal liberty"Journal international de bioethique et d'ethique des sciences Vol. 32(3),2021, pp.133-142など)。 フランスでは、医師の職業上の自由の制約と特権は、いずれも憲法上の健康保護目標によって基礎づけられているが、医プロフェッションの職業倫理の実定法化のしくみや患者の権利の確立との関係も含めた体系的な理解が必要になることが分かった。2022年度はとくに職業倫理について、他の職業との比較を行いたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
フランスにおける医プロフェッションの倫理について、職業倫理の専門家へのインタビューを実施予定であったが、渡航制限のため実施することができない状況が続いたため、計画を変更して次年度にオンラインで実施することにした。また、個人的な理由ではあるが、今年度前半に産休を取得したため、十分な研究時間をとることができなかった。一方、オンラインデータベース等を利用した文献収集を進めることができたため、次年度は、収集した文献を利用して調査研究をすすめ研究計画の遅れを取り戻したい。
|
今後の研究の推進方策 |
日本およびフランスにおける医師の職業倫理および職業選択の自由に関する医事法学と憲法学の先行研究を調査し、比較検討する。とくに本研究課題に関連する範囲で日本国憲法における職責について、神職、弁護士職、教育職等に関する先行研究から学ぶことを目指す。なお、2020年度にインタビューを実施する予定であったフランス医師会会員の都合があえば、オンラインでインタビューを実施する。 研究成果は、所属先のウェブサイトへの掲載や学会誌への投稿等を通じて行う。今年度も、できるだけ日本とフランス両言語での成果発信に努め、広く批判を受けるようにしたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
フランスの研究協力者に対するインタビューを実施することができなかったため、次年度に実施することにした。そのため、専門知識の提供に係る謝金相当額を次年度に繰り越す必要がある。
|