研究課題/領域番号 |
20K13326
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
岡野 誠樹 立教大学, 法学部, 准教授 (50756608)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 司法 / アメリカ憲法 / アメリカ民事訴訟法 / 比較憲法 / クラス・アクション / 団体訴訟 |
研究実績の概要 |
研究実施計画で掲げた各レベルの課題について、一定の進展をみたが、ある程度まで作業の結果が形をなしてきたものとしては、①陪審、上訴、アミカス・キュリーといった、緩やかな意味での制度的側面からのアメリカ司法の特徴の検討、②特にクラス・アクション、団体訴訟を切り口とした日米司法比較が挙げられる。後者については、業績記載の「司法権」論文を、現時点までの成果として公表している。同論文は、本研究課題以前に遂行してきたクラス・アクション研究の成果を参酌して、日本における消費者法分野での団体訴訟制度の展開について憲法学の観点から論じたものである。従前の憲法学説上の位置づけとして、司法権論は、具体的な解釈論レベルでの帰結の差異を生じさせるものではないとの理解が支配的であったと思われるところ、そうした膠着状況に一石を投じたいとの意図から問題提起を試みたが、同論文でなお展開しきれなかった論点も多い。類似の主題でも、引き続き議論の彫琢を図り、次年度以降の業績公表を期したいと考えている。 また、今年度は研究活動の外的条件をコロナ禍によって制約されたのであったが、研究内容においてもコロナ禍の影響を免れなかった。当初は本研究課題と接点をもつか不明なまま、アメリカ司法がCOVID-19のパンデミックにどのように対応したか検討を始め、その成果の一部を「リモート裁判」という論文で公表した。これを端緒に、期せずしてアメリカの刑事手続についての勉強を進めることとなり、現時点で、本研究課題で掲げていた関心との接点も、いくらか捉えることができている。今後、包括的な理解を得られるように検討を続けていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績に記した内容と重なるが、日米司法比較の観点を組み入れた論文を公表することができた。当初の予定では、アメリカ法についての基礎的研究を先行させ、日米比較はその後の目標と考えていたから、この成果はそれだけ捉えれば予想以上の進展とも言える。なお、本研究課題を構想する上で基礎となった、いわゆる助教論文を元に、国家学会雑誌上に連載論文を公表する作業も、今年度中に終えることができ(最終回の掲載は2022年5月)、次年度以降の課題遂行に接続することが容易になった。その一方で、本研究課題全体の主力となるアメリカの判決テクストの分析作業は、一定の像を結んだ業績として公表できる段階には至らずに、次年度に持ち越しになった。全体としてみればほぼ予定通りの進度であると考え、研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、上述の①に対応する研究成果の公表に向け準備を進めることを、当面の優先課題と考えている。基本的には計画どおりの進展を期待できるが、今年度の成果から、刑事手続分野の検討が、人権論との接点を探る上でも実りが多そうだとの感触を得ることができた。その方向から、本研究課題とは(とりわけ時代的な関心範囲の点で)直ちには結びつかない可能性を否定できない検討も、ある程度まで幅広く行いたいと考えているが、翌年度が最終年度となることは意識してバランスを取っていく。
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