研究実績の概要 |
研究計画にのっとり、投資条約仲裁と国内法および国内裁判所との間の関係に関わる1次資料と2次資料の収集および整理を行なった。これは、昨年度の作業の遅れを取り戻すものである。仲裁判断・国内裁判例等の1次資料については、日々新たに公表されるものをフォローしつつ、過去の事例にも遡って整理を行なった。今年度は特に、EU構成国間の投資条約(いわゆるintra-EU IIAs)に含まれる投資対国家間仲裁条項の効力に関する、EU司法裁判所の判断例(Moldova v. Komstroy, Case C-741/19, 2021年9月2日)、Poland v. PL Holdings, Case C-109/20, 2021年10月26日))が重要な展開であり、その射程について、Achmea判決(Slovak Republic v. Achmea, Case C-284/16)との関係について特に分析を加えるとともに、欧州諸国を中心に仲裁判断取消手続における判断例の渉猟と整理を行なった。また、エネルギー憲章条約(ECT)の解釈をめぐって、対スペイン再生可能エネルギー投資紛争を素材に先例を分析し、研究会にて報告を行なった。 投資条約仲裁手続の改革についても展開を引き続きフォローし、最近の先行研究の分析は書評として公表した。昨年度にICSID条約仲裁取消事例(Eiser v. Spain, ICSID Case No. ARB/13/36、EDFI v. Argentina, ICSID Case No. ARB/03/23)について行った研究を、判例評釈の形で公表するとともに、2022年3月に採択を見たICSID仲裁規則の改正の翻訳と分析を行った。
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