研究課題
最終年度は、ICSID条約に基づかない投資条約に注目し、その手続法的性質を検討した。特に、前年度に研究を行ったEU域内投資条約仲裁について分析対象を広げ、172件の仲裁を特定し、全体的な判断傾向を整理するとともに、うち74件の非ICSID条約仲裁手続きに注目して分析を行った。その結果、前年度に検討したGreen Power v. Spain仲裁においては、仲裁地がEU域内にあったことを理由の1つとして、EU法に基づく仲裁管轄権への抗弁が初めて認容されたのに対し、同じくEU域内に仲裁地が置かれた同時期の複数の仲裁(Triodos v. Spain、Mercuria Energy v. Poland II、WCV and Channel Crossings v. Czechia等)では、抗弁が棄却されていることが分かった。このことは、仲裁地の国内法に手続的基盤を持つとされてきた非ICSID条約仲裁は、少なくとも仲裁廷自身にとっては、何らかの意味で「国際的」な手続きであると認識されていることを示唆する。他方で、これら仲裁廷が手続的な「国際化」を追求する一方で、仲裁地の裁判所での取消しは粛々と行われており、仲裁廷と国内裁判所との間で仲裁手続の性質に係る認識のズレが生じていることも分かった。この点を理論的に分析するために、国際商事仲裁の法的性質をめぐるEmmanuel Gaillardの議論などを参照しつつ、国際法と国内法の双方に基盤を持つ投資条約仲裁の特殊性も加味して、非ICSID条約仲裁の「国際化」の理路および実践的帰結について検討を行った。これに加え、研究期間全体を通じて、ICSID条約仲裁における取消手続きのあり方や、外資規制法制が投資条約仲裁に与える影響等を分析することにより、国際法と国内法の狭間に立つ投資家という法的アクターの地位についてより深い理解を得ることができた。
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