研究2年目に当たる今年度は、「考慮」という方法、すなわち、準拠法として指定された国家法の解釈・適用に際し、当該国法以外の国の法や非国家法規範を準拠法上の要件を具体化する事実として考慮する考えにつき、国内外の関連文献を精読し、その理論面について更なる考察を重ねるとともに、規制法(競争法等)といった公法の考慮だけでなく、本研究課題の対象とする非国家法規範の考慮が問題となる場面を具体例として取り上げ、法多元主義の状況下での考慮という方法の有用性について考察を開始した。 まずは、考慮という方法との関係で最も議論ある、規制法(競争法等)の考慮が問題となった国内裁判例の分析を行い、商業誌において判例解説として公表した。これとも関連して、公法(特に我が国の独占禁止法)の影響が、準拠法の選択・適用の局面ではなく、国際裁判管轄の決定(特に、国際的裁判管轄合意の有効性判断)の局面で問題となった裁判例や関連する学説を分析し、その成果を商業誌に公表した。 また、考慮という方法は、このように公法が私法的法律関係に影響を与える場面だけではなく、法多元主義という状況の下、宗教規範といった非国家法規範の影響を私法に取り込む考えとしても注目されているところ、今年度は、本研究課題が対象とする家族法分野における考慮という方法の有用性を検討するための足掛かりとして、世界的な成長が目覚ましいイスラム金融を例に、非国家法規範である宗教規範の考慮という方法の具体的なあり方について検討した。その成果については、次年度に英語及び日本語で公表予定である。
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