研究課題/領域番号 |
20K13331
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
加藤 紫帆 東京都立大学, 法学政治学研究科, 准教授 (60825602)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 抵触法(国際私法) / 国際民事手続法 / グローバル法多元主義 / 宗教規範・慣習規範 / 考慮(データ理論) / イスラム金融 / 人権デュー・ディリジェンス法 |
研究実績の概要 |
研究3年目に当たる今年度は、昨年度に引き続き「考慮」の理論面について考察を重ねるとともに、本研究課題が対象とする家族法分野における考慮という方法の有用性を検討するための足掛かりとして、考慮という方法が有用性を示すと考えられるいくつかの具体例を広く探求した。まず、宗教規範の考慮が考えられる場面として、イスラム金融を巡る紛争の抵触法的処理方法について検討した。そこでは、国家裁判所においてある金融取引のシャリア適格性が争点となった場合、裁判所は、世俗裁判所によるイスラム法の適用可能性を否定して当該争点への判断を拒絶するのではなく、抵触法により指定される準拠法を適用する際、考慮の方法により、契約解釈の問題として、当事者の主張立証に基づくイスラム法を考慮しつつ、上記争点について判断すべきであると主張した。この研究成果については、日本語で公表するとともに(英語でも公表予定)、研究会及び国際シンポジウムにおいて発表した。また、準拠法以外の外国私法の考慮に関しては、企業グループ内部やサプライチェーン上での人権保障の実現へと向け、ヨーロッパ諸国を中心に制定されているいわゆる人権デュー・ディリジェンス法の抵触法上の取扱いについて検討した。そこでは、同法上の義務を負う対象企業を一方的に定める人権デュー・ディリジェンス法の規律方法と、双方主義的な準拠法選択の方法との不整合から、不法行為準拠法として人権デュー・ディリジェンス法が適用されない可能性があるところ、当事者の期待の尊重という観点から、準拠法として適用される法の適用の際に、人権デュー・ディリジェンス法上の義務を考慮する可能性について指摘した。この成果については、商業雑誌において公表しており、2023年度に開催の国際学会において報告することが決定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基本的には研究目的及び研究計画にそった形で研究が進んでおり、特に問題はない。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である次年度は、本研究課題における研究のまとめとして、これまでの検討を踏まえ、考慮という方法の方法論的な明確化を試みた上で、外国の国内事例や学説上の議論の分析・検討を行い、家族法分野における宗教規範・慣習規範の具体的処理方法を検討し、法多元主義の下での抵触法上の方法としての考慮の有用性やその限界について示すことを目標とする。最終的な成果については、国際学会での報告や国内の研究会での報告を行い、ブラッシュアップした後、論文の形にまとめて公表する予定である。
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