最終年度に当たる今年度は、本研究課題の成果のとりまとめを行った。 まず、これまで検討してきた「考慮」という方法の具体的あり方について、その研究成果を英語や日本語で公表した。第1に、文化財の不正取引を巡る紛争との関係で考慮という方法を扱った従来の研究成果を単著としてまとめ、公刊した。第2に、イスラーム金融を巡る渉外的な契約紛争を取り上げ、契約解釈の問題として、イスラーム法という宗教規範を考慮する方法の具体的なあり方について検討し、その成果について、英語で論文にまとめ、書籍の一部として公表した。第3に、国際的な企業グループやサプライチェーンによる人権・環境侵害を巡る紛争を取り上げ、準拠法適用の際に、関連する国家の人権デュー・ディリジェンス法上の義務を考慮する可能性について検討し、その成果について、国際学会において英語で報告した。 また、以上の個別的な検討を踏まえ、本研究課題の総まとめとして、グローバル法多元主義との関係での抵触法の意義や有用性、課題を探るという観点から、本研究課題が対象とする家族法分野における考慮という方法の意義と課題について検討し、代表者の所属機関が開催する公開セミナーにおいて報告した。この研究成果については、さらに考察を深め、現在、論文や研究報告等、成果の公表へと向けた作業に入っている。 研究期間全体としては、準拠法所属国以外の法秩序の規範の考慮という問題につき、上述した最終年度の成果だけでなく、公法的規範の考慮が問題となった国内裁判例の分析を行い、その研究成果について、日本語で公表や報告を行った。
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