研究課題/領域番号 |
20K13337
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
田平 恵 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 准教授 (70632686)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 垂直型企業結合 / 混合型企業結合 / 違法判断基準 / 問題解消措置 / 司法省 / 連邦取引委員会 / 欧州委員会 / 公正取引委員会 |
研究実績の概要 |
本研究は、非水平型企業結合(競争関係にない企業同士の企業結合)による反競争効果発生のメカニズムとともに立証水準を明らかにすることを目的としている。 従来、非水平型企業結合は、市場における競争単位を減少させることはないため、反競争効果を生じさせる可能性は低いと考えられてきたが、近年、国内外で詳細な審査を必要とする非水平型企業結合事例が生じている。競争当局の執行方針に分析枠組みは示されているものの、個別事例の違法性判断にはさらなる要素(市場構造、取引慣行、商品の特性等)の考慮が必要となる。そのため、競争当局および当事会社(企業結合を計画する事業者)双方にとって、垂直型企業結合による反競争効果発生の検討には多くの労力と時間を費やすという問題がある。 そこで、本研究では、日・米・欧州の非水平型企業結合事例を研究対象として、違法性判断の際に考慮するべき要素を明らかにする。本研究は、企業結合規制の透明性・予見可能性・法的安定性の向上に貢献するものである。 本年度は、文献収集のほか、研究会参加・報告等を通して、主に欧米の動向の把握につとめた。米国では、2020年6月に垂直型企業結合ガイドラインが約40年ぶりに改定され競争当局による判断枠組みの明確化が図られたことや、垂直型企業結合に関するコメンタリーが公表されたことなど、積極的に垂直型企業結合規制の執行に取り組む競争当局の姿勢が見られたことから、特に米国の動向を中心に整理した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、特に米国の動向の把握に注力した。第一に、米国における動向の把握として、垂直型企業結合ガイドラインの見直し案および成案の内容を整理・分析した。その内容を独禁法研究会(2020年7月)にて報告した。第二に、日本・米国・欧州における非水平型企業結合の規制動向を整理・分析し、東京経済法研究会(2020年9月)、関西経済法研究会(2021年3月)にて報告を行った。以上の進捗は、当初の計画通りであるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は研究対象となる「素材集め」を中心的に行ったため、今後は、ガイドラインや検討対象事例が持つ意義を明確にすること、そして、それぞれの位置づけを行うことを予定している。米国と欧州それぞれの特徴を明らかにすることも試みたい。そのうえで、日本法への示唆が可能な点を明らかにしていく。文献研究で明らかにならない点もあることから、適宜インタビューや意見交換の機会を得て引き続き研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により、予定していた出張ができなくなったため、その分が次年度使用額になっている。新たに文献を購入する必要が生じたため、その費用に充てる予定である。
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