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2023 年度 実施状況報告書

更生保護施設における施設退所者への通所処遇の在り方

研究課題

研究課題/領域番号 20K13343
研究機関福島大学

研究代表者

高橋 有紀  福島大学, 行政政策学類, 准教授 (00732471)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2025-03-31
キーワード更生保護施設 / 更生保護 / 更生保護法 / 刑事政策
研究実績の概要

2022年度はコロナ禍の影響が続いており、日本国内の更生保護施設への視察・聞き取り調査は断念せざるを得なかったものの、2022年9月には英国にて調査をおこない、英国内の更生保護施設(probation hostel)や出所者等を受け入れる民間の宿泊型支援施設を視察し、日本国内の状況に関する文献調査に新たな示唆を得ることができた。また、2022年に刑法等の一部を改正する法律が成立し、2023年以降、本研究のテーマと密接にかかわる更生保護施設における通所・訪問型保護事業が開始されることとなったため、それらについて踏み込んだ調査・考察を続ける必要を見出し、期間を延長するに至った。
2023年度は、更生保護法、更生保護事業法の改正や、2023年3月に公表された第2次再犯防止推進計画を踏まえ、各地の更生保護施設における通所・訪問型保護事業や「特定補導」の実態について、文献調査及び聞き取り調査をおこなうことに注力し、法務省保護局にて聞き取り調査をおこなうとともに、旭川清和荘(旭川市)、敬和園(東京都中野区)にて視察・聞き取り調査を実施した。また、研究の成果について、日本刑法学会ワークショップ(理事会指名座長)、日本更生保護学会分科会(招待あり)にて発表した。それらを通し、「特定補導」や通所・訪問型保護事業に対する各更生保護施設の受け止めは多様であることや、その背景に社会福祉関係法規と更生保護関係法規の間のいわゆる「制度の狭間」が存在することが確認された。そのため、本研究の成果のまとめに際し、2023年12月の改正更生保護事業法施行後の状況についてさらに聞き取り調査等をおこなう必要があると考え、期間を再延長するに至った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は当初2022年度末で終了する予定であったが、コロナ禍以前の状況を前提に2020年度中から更生保護施設での視察・聞き取りを多くおこなう予定を大幅に変更せざるを得なかったこと、2022年に更生保護法、更生保護事業法が改正され、2023年12月にこれら改正法が施行されたことに照らすと、結果論ではあるが、法改正の経過や法改正後の運用を踏まえた研究成果を公表することを新たな目標として研究計画を再編し、それに即して文献調査、聞き取り調査を進めることができている。また、2023年度中には本研究に関係した学会発表をいずれも主催者からの指名・招待によりおこなうことができた。くわえて、2024年秋に本研究代表者を大会長として更生保護学会大会を開催予定であり、同学会においても更生保護施設に関する話題を取り上げるなど、本研究成果の公表、社会還元について具体的な計画を有している。
さらに2024年から2025年にかけて、本研究のテーマと関係する、近時の更生保護施設の「処遇施設化」に伴う諸課題について書籍収録論文2本の執筆予定もあり、期間延長後の聞き取り調査や文献調査の結果を踏まえた研究成果の公表が見込まれる。

今後の研究の推進方策

2024年度には本研究を終了予定であり、研究成果の公表に向けて追加の文献調査、聞き取り調査をおこなうとともに、論文執筆や学会発表の準備をおこなう。論文執筆に際しては、更生保護施設に求められる役割や入所者、退所者の事情に関する歴史的な変遷を踏まえる必要性も高いことから、2000年代以降の法改正に関する議論について文献調査を通じて再確認するとともに、更生保護施設をめぐる近時の法改正に対する施設関係者の見解等について聞き取り調査をおこなう。
さらに2024年秋には、本研究代表者を大会長とする日本更生保護学会大会が開催予定であり、同大会にて更生保護施設や更生保護事業に関する分科会やシンポジウムを企画することで本研究の知見の公表、社会還元を図る。
また、2023年度後半の調査を通じて、更生保護施設入所者の退所後の地域生活支援に際して、既存の地方自治体の生活保護行政や障害者福祉サービスの仕組みの下ではスムーズにいかないケースがあることが把握された。そのため、これらの法制度に関する情報を整理し、更生保護施設の入退所者が陥りがちな「制度の狭間」について検証し、そのような狭間を架橋する刑事政策及び地域福祉の枠組みについて、次年度以降の研究課題を見出したい。

次年度使用額が生じた理由

2023年12月に更生保護法、更生保護事業法の改正法が施行されたことを踏まえ、改正後の状況について2024年度中に更生保護施設等への追加で聞き取り調査をおこない、その成果を2024年度中に執筆予定の論文に反映するため、調査旅費及び論文執筆にかかる事務経費として使用する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件)

  • [雑誌論文] 「学域BBS会の意義と課題―福島大学BBS会を参考に」2024

    • 著者名/発表者名
      高橋有紀
    • 雑誌名

      罪と罰

      巻: 61(2) ページ: 116-121

  • [雑誌論文] 「政策を通じて「地域」を作る―刑事政策ゼミと福島大学BBS会」2023

    • 著者名/発表者名
      高橋有紀
    • 雑誌名

      協同の発見

      巻: 365 ページ: 29-34

  • [雑誌論文] 英国の修復的司法2023

    • 著者名/発表者名
      高橋有紀
    • 雑誌名

      比較法研究

      巻: 83 ページ: 186-191

  • [雑誌論文] テキストマイニングを用いた都道府県再犯防止推進計画の検討2023

    • 著者名/発表者名
      ブルースター デイビッド、向井 智哉、高橋 有紀、竹中 祐二、相良 翔、鈴木 政広、 相澤 育郎
    • 雑誌名

      実践政策学

      巻: 8(2) ページ: 137-145

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 「更生保護施設の処遇施設化と多機能化をどう見るか」2023

    • 著者名/発表者名
      高橋有紀
    • 学会等名
      日本更生保護学会第12回大会
    • 招待講演
  • [学会発表] 「刑事政策とケア的な地域社会」2023

    • 著者名/発表者名
      高橋有紀
    • 学会等名
      第69回東北社会学会大会
    • 招待講演
  • [学会発表] 更生緊急保護2023

    • 著者名/発表者名
      高橋有紀
    • 学会等名
      日本刑法学会第101大会ワークショップ
    • 招待講演

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公開日: 2024-12-25  

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