逮捕の違法と被疑者勾留の可否に関しては、多数の裁判例の蓄積がある。これらの分析を通して、逮捕の違法が様々な要因により生じていることが明らかとなった。逮捕は執行の誤りが生じやすい本来的に危険な手続であるといえる。 それゆえ、逮捕については、短期間の身体拘束しか許さないことに加え、危険な逮捕に対する安全装置、すなわち身体拘束を継続することが禁止される場面でないかどうかの審査もまた機能させるべきと考えられる。これを踏まえ、逮捕前置主義とは、逮捕と勾留の一体性を肯定する機能を有するものであると同時に、勾留審査の際に先行する逮捕の違法に対しても審査を求めることで、違法な身体拘束の継続から被疑者を保護するものであるとの結論を得た。 次に問題となるのは、違法逮捕後の勾留が許されないとしても、再逮捕は許容されうるかという点である。 先行する逮捕が違法である場合には、再逮捕禁止の例外に該当するだけでなく、その違法についても解決される必要があると考えられる。先行する逮捕の違法が再逮捕に引き継がれているのであれば、違法の程度を問わず再逮捕は許容されない。先行する逮捕と再逮捕が一体的な手続と見られる場合において再逮捕を許すことは、違法な手続の継続を司法が漫然と看過することに他ならないからである。 例えば先行逮捕中に得られた資料を根拠として再逮捕の理由等が認められたにもかかわらず、形式的な釈放のみによって先行逮捕を終結させたという場合には、一体性が肯定されるというべきである。先行逮捕と再逮捕との一体性を検討したうえで、一体性が肯定される場合には、違法手続の打切りという観点から再逮捕の可否が検討される必要があるとの結論を得た(逮捕の違法が再逮捕に引き継がれないものの、違法の程度が重大であるという場合に、政策的観点から再逮捕を許さないことを否定するものではない)。
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