本研究は、a)実行の着手、b)詐欺罪における錯誤要件、c)準詐欺罪の活用に関する研究から構成される。a)研究では、窃盗罪においては被害者が財物に対して設定している物理的・心理的障壁を行為者が攻撃し始めた段階で実行の着手が認められ、電子計算機使用詐欺罪においては被害者側の電子計算機に行為者が働きかけを行った時点で実行の着手が認められる、とのものである。b)研究では、対多数詐欺における錯誤立証の問題点を整理し、比較法的知見を踏まえて、実体法的アプローチを採用するべきことを提唱した。c)研究では、準詐欺罪の従前の議論状況からは、同罪の成立範囲を広く捉える理論的余地があることを提唱した。
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