研究課題/領域番号 |
20K13354
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研究機関 | 國學院大學 |
研究代表者 |
安田 恵美 國學院大學, 法学部, 准教授 (90757907)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ヴァルネラビリティ / 社会参加 / 「司法と福祉の連携」 / 社会的排除 |
研究実績の概要 |
2020年度は、研究会を通しての情報交換、zoomも用いたインタビュー調査およびこれまで行ってきた高齢犯罪者の社会参加をめぐる考察の整理およびそのアウトプットをを行った。 高齢犯罪者の社会参加にかんする理論研究としては、まずその柱となる高齢犯罪者等の「ヴァルネラビリティ」について、整理する作業を進めた。ヴァルネラビリティについては、「様々な問題に直面しやすい状況をさしている」と解している。そこで、刑事司法手続きにおかれたことに由来する「ヴァルネラビリティ」と「高齢」であることに由来する「 ヴァルネラビリティ」を分けて考察し、そこから社会復帰の難しさを明らかにすることを試みた。 この理論が実態に即しているかどうかを確認するために、zoomにより実施された研究会に参加し、多分野多領域の研究者および実務家と意見交換を行った。くわえて、感染症対策を行ったうえでの、支援者や刑務所出所者に対してインタビューも行った。その内容については、現在アウトプットに向けたデータを整理しているところである。 上記研究活動によって明らかになった、高齢犯罪者等の社会(再)参加を促進するための施策について、日本精神保健福祉士会が運営するオンラインセミナーや名城大学法学部70周年記念シンポジウムにおいて、受刑者や刑務所出所者の特性に応じた社会参加の支援体制についてプレゼンテーションを行った。また、その成果については、2021年1月公刊の金澤真理・安田恵美・髙橋康史編『再犯防止から社会参加へ』において公表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、研究計画に遅れが生じている。まず、2020年前期は、オンライン授業の実施の準備に時間を割く必要があったため、研究活動を行う時間を十分に確保することはできなかった。また当初予定していたインタビュー調査等も、一部はzoomや、感染症対策を十分に行ったうえでの対面で行うことができたが、予定の1/3程度しか行うことができなかった。 また、本研究では、フランスにおける実態調査も予定していたが、同様にコロナ感染症対策の影響で渡仏が叶わなかった。そのため、当初の計画よりも本研究の進捗状況は遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
現在日本の高齢者犯罪の現状および施策について、先行研究を踏まえながら整理を行っている。これをもとに、フランスの状況との比較検討を行う予定である。とりわけ、フランスでは、「55歳以上の受刑者」を高齢受刑者として、処遇上の配慮を行っている。その根底には、「ヴァルネラビリティ」の考慮があると思われる。ここで考慮されている内容は高齢者特有のものなのか、あるいは障がい者や少年にも共通するところなのかは、今のところ 明らかでない。今後は、考慮の対象となっている「ヴァルネラビリティ」の具体的な内容について聞き取り調査を行うとともに、日仏の実践の分析および議論状況の整理を通して、「処遇上の配慮」として(まずは)対応を行っている・行うことが可能な部分と、そうでない部分(早期釈放制度を活用すべき部分)等を明らかにする作業を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年は新型コロナウイルス感染症の影響を受けて研究活動を縮小せざるを得なかった。そのため、特に旅費についてはほとんど執行することができなかった。2021年度は、状況を見ながら研究活動を行っていく予定である。2022年は在外研究を行っていることから、フランスやヨーロッパでのみ入手可能な図書を購入する予定である。また、状況をみながらフランスおよびヨーロッパでの調査を実施し、それにかかる旅費を執行する予定である。
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