研究課題/領域番号 |
20K13356
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
西貝 吉晃 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 准教授 (50707776)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | サイバー・フィジカル・セキュリティ / マルウェア / 無権限アクセス / サイバー・セキュリティ / コネクティッドカー |
研究実績の概要 |
2021年度は、まず、我が国におけるサイバー・フィジカル・セキュリティを保護することのできる刑罰規定の調査結果をまとめて、これを「サイバー・フィジカル・セキュリティの維持に関する政策的議論及び罰則の現況」というタイトルで千葉大学法学論集にて発表した。刑法だけにとどまらず、複数の特別法にまたがって存在する刑罰規定群の解釈論を1つずつ確認したながら、総体としてどのような整理が可能であるか、について考察しつつ、サイバー・フィジカル・セキュリティの保護という観点から、今後、どのような刑罰規定が求められるか、について、青写真的な議論を展開した。特にコネクティッドカーのシステムにフォーカスしたものとして櫻庭信之ほか編著『法律実務のためのデジタル・フォレンジックとサイバーセキュリティ』所収の拙著「サイバー・フィジカル・システムに対するサイバー攻撃と刑法的対応ーーコネクティッドカーの事例を参考にして」も参照。 上記の問題意識に基づいて、ドイツにおけるサイバー・フィジカル・セキュリティを保護することのできる刑罰規定の調査に取組み、簡易ながら、これを刑事法ジャーナルにて公開した。これは、ドイツ刑法303条bを検討対象としたものであるが、我が国の電子計算機損壊等業務妨害罪と比較すると、複数の法定刑を擁する綿密な規定だといえ、今後の立法論における手がかりになれば幸いに思っている。 同時に、サイバー・フィジカル・セキュリティの保護に間接的に関係する不正指令電磁的記録に関する罪についての事件(コインハイブ事件)が最高裁に係属していたから、同罪についての解釈論、立法論を最高裁に係属していた事件における解決方法を探りつつ、千葉大学法学論集(タイトルは「アプリ開発の実務を踏まえた不正指令電磁的記録に関する罪の一考察 : コインハイブ事件を契機として 」(ただし共著でセカンドオーサー))、罪と罰にて発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我が国の現状を相当程度網羅的に調査し、それを発表できたことと、多くの議論のあるドイツ刑法について、一定の水準のものを報告できたので、概ね順調に進展したものと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後(2022年度の下半期から)は、オーストリアの刑法の規定等の諸外国の規定をさらに調査して、我が国におけるサイバー・フィジカル・セキュリティの刑法的保護を考える上での土台となる議論を作っていきたい。 いくつかの国々の議論の現状を調べた後に、我が国のサイバー・フィジカル・セキュリティの保護のための規定案を複数、作成し、立法論を展開してみたいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により旅費を使用する機会がなかったのが大きな原因だと思われる。 次年度についてはこれを使用することも検討したいが、難しい可能性もあるので、その場合には、貴重書や研究に使用するIoT機器を購入する等して、じっくりと研究環境を整えていきたい。
|