研究課題
若手研究
本研究では、いわゆる「故意の提訴機能」を手がかりにして、刑事責任論における規範的責任論の現代的意義について分析を加えた。その結果、責任の積極的側面では心理的責任論が、消極的側面では規範的責任論がそれぞれ妥当するという結論に至った。また、本研究の構想する刑事責任論体系の実践的意義を明らかにするため、未遂犯の故意および公務執行妨害罪における職務の適法性の錯誤についても検討を行った。
刑事法学
刑法上の責任は、従来通説のように規範的責任論から一元的に導かれるべきではなく、むしろ故意・過失を考える際には「法益侵害的心情」という心理的責任に着目すべきである。この心理的責任は、行為者の危険性の徴憑としてではなく、行為時における意思責任として把握される。他方、規範的責任論は、「反対動機形成可能性がない場合には責任を問うことができない」という消極的側面においてはなお意義を見出すべきである。このような刑事責任論の体系構想は、個別の論点においても有益な解釈論的指針となりうる。