研究課題/領域番号 |
20K13360
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
金 鉉善 北海道教育大学, 教育学部, 講師 (50827037)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 根抵当権 / 被担保債権の範囲 / 一定の種類の取引 / 韓国の根抵当権 / ドイツの土地債務 / ドイツの保全土地債務 / 担保物権 |
研究実績の概要 |
本研究では、立法以前から現在に至るまでの根抵当権の被担保債権の範囲に関する判例を整理・分析することによって、日本民法第398条の2第2項の規定する「一定の種類の取引」の判断基準を明確にする。 そこで、2020年度は、以下の2点を中心に研究を行った。 第一に、「一定の種類の取引」の判断基準をめぐり、以前から判例・学説上で議論されている、最判平成5・1・19民集47巻1号41頁(被担保債権の範囲を「信用金庫取引による債権」とする根抵当権と保証債権との関係)と最判平成19・7・5判時1985号58頁(被担保債権の範囲を「保証委託取引による債権」とする根抵当権と保証債権との関係)に関する判例を分析し、学説の見解を整理した。 第二に、韓国の根抵当権の被担保債権の範囲に関する文献、とりわけ「2004年民法改正案」と「2013年民法改正試案」に関する論文や資料等を収集し、現在の改正動向について研究を行った。そこで、「2004年民法改正案」には存在していた被担保債権の範囲に関する条文が「2013年民法改正試案」では削除されたこと、いいかえれば、「2004年民法改正案」第357条の2によって禁止されることになっていた包括根抵当権が、「2013年民法改正試案」では当該条文が削除されたことにより、現在の判例や金融取引実務と同様に取引包括根抵当権を認める方向に改正が進んでいることがわかった。一方、2012年6月25日の韓国の金融監督院による行政指導では、現在金融取引実務で使われている「特定根担保」「限定根担保」「包括根担保」の根抵当権の3類型を修正して「銀行の包括根抵当の一括解消及び被担保債務の範囲の縮小施行」を発表し、包括根抵当権の利用を制限する方向に進んでいる。すなわち、両者の見解の違いが見られる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19の影響で、当初の研究計画より、資料収集や聞き取り調査がやや遅れている。 第一に、毎年行われている日韓土地法学術大会がCOVID-19で中止されたため、そこで予定していた日本および韓国の金融担保の専門研究者に対する聞き取り調査ができなかった。その代わりに、電話やメールによる聞き取り調査を行ったため、やや遅れが生じている。 第二に、現在の所属研究機関には日本法をはじめ法学関連文献が乏しいため、日本の根抵当権の被担保債権の範囲に関する最新の文献やドイツの保全土地(保全土地債務)に関する最新の文献の収集を申請者の博士課程の所属研究機関で行う予定であったが、緊急事態宣言などで他県への出張が制限された。その代わりに、インターネット上のデータベースのみで資料収集を行ったため、やや遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、以下の4点を中心に行う予定である。 第一に、ドイツ法と関連しては、2008年改正後の保全土地債務における包括担保条項の運用および解釈が注目されるため、ドイツでの実態調査が必要である。しかし、COVID-19の影響で2021年度にドイツでの実態調査ができるかはまだ未定なので、日本国内で入手できる判例およびコンメンタールを購入して、今後のドイツでの実態調査に向けての事前研究を行う。そして、オンライン講座や会議などを最大限活用して、ドイツの最新の情報や資料を入手する予定である。 第二に、韓国法と関連しては、「2004年民法改正案」「2013年民法改正試案」のその後の改正動向が注目されるため、韓国での実態調査が必要である。しかし、上記と同様に、2021年度に韓国での実態調査ができるかはまだ未定なので、日本国内で入手できる改正に関する文献などを購入して、今後の韓国での実態調査に向けての事前研究を行う。そして、2021年度の日韓土地法学術大会はオンラインで実施される予定であるため、事前に韓国の金融担保の研究者や実務家と連絡を取りながら、研究を進める予定である。 第三に、日本の根抵当権の被担保債権の範囲に関する研究、とりわけ、実務における根抵当権の利用実態に関するアンケート調査に向けての事前研究を行う予定である。申請者の現所属研究機関がある北海道と、申請者の博士課程の所属研究機関があった広島の2ヵ所を研究拠点とする予定であるため、金融担保法の専門研究者である鳥谷部茂広島大学名誉教授の助言を受けながら、アンケートの質問項目などを設定する予定である。 第四に、適時学会や研究会において中間報告を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
書籍購入、とりわけ韓国の根抵当権に関する書籍は現地で内容を確認した後に購入する予定であったが、COVID-19の影響で出張ができなかった。その代わりに、インターネット上の情報で書籍を購入したため、当初計画した書籍をすべて購入することを見送っている状況である。そして、ドイツの(保全)土地債務に関する書籍、特にコメンタールは2021年度に新版が出るということで、購入を2021年度に見送った。 出張のために計上したものも、COVID-19の影響で見送っている状況である。 次年度の状況を見ながら、書籍の購入および出張を適時行う予定である。
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