研究課題/領域番号 |
20K13364
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
増田 友樹 富山大学, 学術研究部社会科学系, 准教授 (70805720)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 倒産会社 / 事業再生 / 株主の利益 |
研究実績の概要 |
本年度は、倒産会社における株主の利益や倒産局面における取締役の義務の内容を明らかにすることを試みた。 まず、不可解な理由で会社が解散され、その後に特別清算申立てが行われた事案を題材に、取締役の善管注意義務違反を検討した。当該事案では適法な株主総会決議かつ少数株主の理解も得て会社の解散が行われており、取締役の善管注意義務違反は認められないことを明らかにした。当該事案のように会社の解散の是非に関する取締役の善管注意義務違反が争われることは珍しく、当該事案は本研究を進める上で貴重なものであった。 さらに、倒産手続における株主総会の位置づけについて、アメリカ法を参照して検討を行った。わが国では、倒産手続開始以降(特に債務超過の場合)、株主総会が開催されないことも多いとされる。もっとも、アメリカにおいては、株主の利益という観点から、倒産手続開始後も株主総会を開催することが原則として認められていた。このような検討からは、たとえ債務超過であっても、株主総会の不開催は慎重に検討しなければならない事柄であることが示唆される。 最後に倒産局面における取締役の義務がわが国でどのように形成されてきたのかを検討した。取締役の第三者に対する責任を定める規定は、導入時点では一定の必要性が認められた。もっとも、同規定は昭和25年に十分に議論されずに適用範囲を拡大する形で改正されたこと、同規定に関する最高裁判決の立場は取締役の監視義務違反への対処を考慮している可能性があることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今後の検討を進めるにあたって前提となる外国法の実態やわが国の法改正の経緯などを詳細に分析することができている。また、実際の裁判例を通じて、倒産局面における取締役の善管注意義務についての内容も確認できている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に検討したアメリカ法の議論をそのままわが国の議論に持ち込むことはできない。したがって、アメリカ法の議論が前提としている制度や経済的状況とわが国のそれがどの程度共通しているかをより詳細に検討していきたい。 また今年度は法制度やその解釈を中心に研究を進めたが、今後は倒産局面における取締役や株主のインセンティブについて経済分析を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、主として新型コロナウイルスにより研究会や学会が中止・オンラインになったことで、計画していた出張がすべてなくなったからである。 次年度使用額については、ノートパソコンの購入に充てる予定である。引き続き新型コロナウイルスの影響で在宅・オンラインでの研究活動が多くなるなかで、現在保有する古いノートパソコンでは十分に研究活動を進められないからである。
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