研究課題/領域番号 |
20K13367
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
仲 卓真 大阪市立大学, 大学院法学研究科, 准教授 (80825018)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 会社法 / 同族会社 / ファミリービジネス / 閉鎖会社 |
研究実績の概要 |
本研究の課題は、同族会社の実態や行動原理を踏まえたときに、会社法が同族会社をどのように規律するべきなのか、である。具体的には、(i)まず経済学や経営学の研究を参照して、同族会社の実態やその経営者の行動原理を把握する。その結果を踏まえて、(ii)従来の閉鎖会社に関する研究の再検討、(iii)同族会社の株主構成に関わる会社法上の制度の検討、(iv)同族会社のガバナンスについての検討を行う。 令和2年度は、本研究の第一段階として、経済学や経営学の研究を参照して、同族会社の実態やその経営者の行動原理を把握することを試みた。具体的には、経済学・経営学の分野において2000年前後から活発になされているファミリービジネスに関する研究の成果を参照することによって、同族会社の特徴を従来よりも正確に把握して、そこから導出される会社法学への示唆と今後取り組むべき課題を提示した。 例えば、経済学・経営学の分野におけるファミリービジネス研究では、創業者一族内部における感情的な結び付きに着目するsocioemotional wealth理論が主張されている。会社法学においても、そのような感情的な結び付きに着目することによって、会社の非公開性の前提にある株主間の信頼関係の実質を実態に即した形で明らかにすることができ、同族会社の特徴をより的確に踏まえた法律論を展開することができる可能性がある。もっとも、socioemotional wealth理論のような研究はまだ発展途上の段階にあり、それを会社法学に応用するのはさらにその先に残された課題である。 以上の研究成果は、論文にまとめて公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度は、「研究実績の概要」で述べたように、本研究の第一段階として、経済学や経営学の研究を参照して同族会社の実態やその経営者の行動原理を把握することを試みたところ、その研究成果を論文にまとめて公表することができた。この研究成果は、本研究全体にとっての基礎として位置づけられるものである。したがって、本年度にこの部分に関する研究の成果を得ることができたことは、本研究全体にとっても望ましいことである。よって、現在までの進捗状況としては、「おおむね順調に進展している」と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、令和2年度に得ることができた研究成果を基礎として、従来の閉鎖会社に関する研究の再検討を行う予定である。具体的には、支配株主による抑圧から少数派株主をどのように保護するべきかといった点や、株主間の対立により会社がデッドロックの状態に陥った場合の解決策として会社の解散に関する会社法上の規定が適切であるかといった点を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、未使用額が僅少であり、必要な支出を賄うに足りないものであったからである。この次年度使用額は僅少であるので、次年度の交付額と合算して使用することによって、本研究の計画に従って適正に使用する予定である。
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