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2020 年度 実施状況報告書

写真の「創作性」判断に関する比較法的研究

研究課題

研究課題/領域番号 20K13381
研究機関東京大学

研究代表者

酒井 麻千子  東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 准教授 (20734271)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2022-03-31
キーワード著作権 / 創作性 / 写真
研究実績の概要

今年度の研究実績は以下のとおりである。
まず、日本とドイツを対象に、写真の「創作性」、特に被写体の選択・組合せ・配置といった被写体の決定に関する要素を考慮するか否かという点について、文献を集めて検討した。日本については、現行著作権法制定以降の議論を学説・裁判例を含め包括的に検討した結果、被写体のポーズを考慮するなど被写体の決定につき一定の考慮を肯定する見解が相対的に多かった。しかし特に2000年前後の学説及び裁判例を分水嶺として、学説では被写体の決定を要素に加えないとする見解が有力となっており、他方で、裁判例では被写体の決定を要素に含めるものが相対的に増大しているように思われることから、その差異を検討し、創作性判断における各要素の考慮の方法について一定の示唆を得た。ドイツでは、被写体の選択につき議論が存在すると思われるものの、全体として被写体の決定に関連する要素を考慮に入れると考えるものが多いと考えられる。
また被写体の決定についての議論を検討する上で、研究計画の段階では対象国としなかったもののアメリカも対象とし、文献や裁判例を集めて検討した。これは、写真の著作物性につき非常に古くから判例が存在し、特に被写体の決定に関する要素の考慮についての議論も多いことから、日本での議論において参照の必要があると考えたためである。1886年に出されたリーディングケースでは、ポーズの指示や服装、調度品等の調整など、被写体への関与を認めるものであり、以降の裁判例もこれを前提として議論が進められている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

COVID-19の影響により、特に年度前半では書籍購入を含め研究体制を整えるのに苦労した。年度後半は書籍も入手可能になり、学外から一部の判例データベースにアクセスすることも可能になったため、一定程度研究を進めることができた。
2020年度の研究を踏まえて現在論文を執筆しており、公表予定ではあるが、本来の予定からは若干遅れてしまっているため、来年度の研究計画(特に在外研究)も含めて見直しが必要であると考える。

今後の研究の推進方策

2021年度は前年度に引き続き、関連文献及び当時の判例などを集めて検討する作業を行う。前年度できなかったドイツの裁判例や欧州司法裁判所(CJEU)の裁判例等を検討し、より知見を深め、写真固有の「創作性」判断の意義と射程を考察したいと考える。
論文の執筆も進め、その成果を順次発表していく予定である。学会や研究会における発表にも積極的に応募し、参加者からのコメントを仰ぐ機会を定期的に設けたい。他方で、在外研究については、COVID-19の影響が大きいため難しいと考えられるため、オンライン開催の海外での研究会や学会に積極的に参加したい。

次年度使用額が生じた理由

COVID-19の影響で、学会参加や文献収集等のための旅費に充てていた金額を使用することがなかった。このため、ほぼ旅費に該当する金額が次年度使用額として生じた。2021年度も旅費を計上しておりほぼ同様の事態が生じると思われるが、2021年度は国際学会をインターネット等で開催する等の状況が増えると考えられるため、そこに充当しつつ、遠隔での文献の取り寄せ等に必要な費用として使用しようと考える。

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公開日: 2021-12-27  

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