研究課題/領域番号 |
20K13389
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
石巻 実穂 早稲田大学, 法学学術院, 講師(任期付) (10822273)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 環境法 / 原因者負担原則 |
研究実績の概要 |
本年度は当初の研究計画通り、「原則」と「ルール」の環境法上の分類につき検討を行った。概要は以下の通りである。 まず、アメリカの法哲学者ロナルド・ドゥオーキン、およびドイツの憲法学者ロバート・アレクシーによるそれぞれの「原理理論」における「原理(Principle, Prizip)」と「ルール(Rule, Regel)」との区別を確認した。そのうえで、原理理論が環境法原則の解釈に与える影響を分析した。その結果、ドイツ環境法および国際環境法における「原則」の解釈において、原理理論をドゥオーキンやアレクシーが説いた本来の形で当てはめることはできないということがわかった。その理由は、原理理論が①原理もしくはルールの適用・採用の場面として裁判を想定していること、②原理を個人の権利として捉えており、個人の権利としての原理同士が衝突した際の裁判所による解決方法を論じていることにある。環境法原則は、その適用・採用の場面として立法の段階に焦点が置かれており、個人の権利を対象とするものではなくむしろ公共性の高い政策的背景をもつものであるため、上記①②にそぐわない。したがって、環境法原則の文脈では、環境法原則の性質に則して原理理論を修正する必要があるのである。もっとも、修正を加えられつつも原理理論は環境法原則の解釈論の発展に大いに寄与している。また、環境法原則の内容の充実に応じて、環境法の領域における「原則」と「ルール」の区分論も徐々に発展していくことが予想される。 さらに、本年度はドイツにおける原因者負担原則の法的性質に焦点を当てた考察にも取り組んだ。ドイツ環境法上の原因者負担原則はそれ自体としては法的拘束力を有していないが、それにもかかわらず立法および裁判の場で結論を一定の方向に導く機能を果たしている。 上記の研究成果はいずれも本年度内に公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は4年間で実施するものであり、このうち初年度にあたる本年度は、「原則」と「ルール」の環境法上の分類につき研究を行うこととなっていた。この点、実際の研究進捗状況としては、おおむね順調に進展しているものと評価できるように思われる。その理由としては、次の二点が挙げられる。 第一に、当初の予定通りに「原理」と「ルール」の環境法上の分類に関する研究成果を公表することができた点である。とりわけ、本年度はドゥオーキンおよびアレクシーが展開したいわゆる「原理理論」が環境法原則に与える影響および両者の接合点を考察する予定であったところ、本年度の「研究実績の概要」に記した通り、「原理理論」は、現代の環境法原則に特有の「公共性の高い政策的背景」を有する規範を対象に捉えていないため、原理理論は環境法原則の文脈において原型のままでは該当しないが、実際には原理理論を修正する形で環境法原則の解釈が展開されている、という結論を見出すことができた。 第二に、当初の予定には組み込まれていなかった研究成果の公表が実現したことである。ドイツにおける原因者負担原則に関しては、令和3年度においてその具体的発現形態を検討する予定であったところ、このうち法的拘束力に関する研究が本年度中に実現した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、当初の計画通りに研究を進める。 とりわけ令和3年度は、国内の個別環境法に具体的に現れた原因者負担原則の形態を他の法域の環境法上の原因者負担原則の発現形態と比較し、その強度ならびに機能の十分性、およびその課題を考察する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により本年度に計画していた出張やインタビュー調査等が実現せず、次年度に持ち越しとなったため、使用額に変更が生じた。
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