研究課題/領域番号 |
20K13389
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
石巻 実穂 早稲田大学, 法学学術院, 招聘研究員 (10822273)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 環境法 / 原因者負担原則 |
研究実績の概要 |
令和3年度は、研究実施計画の通り、原因者負担原則の具体的発現形態に関する研究を実施した。わが国環境法上の原因者負担原則はその根拠規定がないに等しく、個別法上に明文規定として発現することが適用の前提条件となっている。そのため、原因者負担原則の解釈および適用は個別法に委ねられており、その意味で非常に柔軟かつ緩やかな規範ということができるが、これが原因者負担原則のあるべき姿であるのかという問題は、原因者負担原則の規範としての意義を検討するために非常に重要である。本研究は、この点について他の法域の例を通じて考察することを目的とする。研究の手法としてはとりわけ、他国の国内法上の原因者負担原則の法的性質および具体的機能を検討することとし、対象国をドイツおよびアメリカに設定した。 ドイツおよびアメリカの両国において、原因者負担原則の一般規定は存在せず、原因者負担原則を個別法において採用するか否か、ひいては「原因者」の定義や責任の内容、その程度等についていかに規定するかは、立法者に委ねられているという点で共通している。実際の立法例をみると、個別の問題ごとに個別法において責任主体としての「原因者」の定義や責任内容が定められているが、責任主体として原因者以外の者が動員される例もある。もっとも、両国ともに、原因者以外の者への責任追及は原因者へのそれとは異なり一定の限度を超えてはならないものとして、立法・行政・司法の各局面において調整が図られている。結論としては、ドイツおよびアメリカにおける原因者負担原則は、一般規定がないためそれ自体に法的拘束力はないが、立法者、行政当局、および裁判所に対して「原因者」への責任追及を妥当な結論として採用するように誘導する「超法規的指導概念」として機能しており、一般規定の欠如が必ずしも原因者負担原則の機能を損ねる要因とはならないということが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は4年間で実施するものであり、2年目にあたる本年度は、研究実施計画上、原因者負担原則の発現形態について研究することとなっていた。この点、実際の研究進捗状況としては、おおむね順調に進展しているものと評価できるように思われる。その理由としては、研究実施計画に示した通り、①他の法域の環境法上の原因者負担原則の発現形態を比較対象とし、②一般的な根拠規定の欠如と原因者負担原則の具体的機能の充実性との関係を考察したことが挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、当初の計画通りに研究を進める。 とりわけ令和4年度は、本年度の研究成果を公表するとともに、CCSや海洋ごみ問題等の環境法上の喫緊の課題への対処において、原因者負担原則が演じうる役割について考察する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により出張やインタビュー調査等が実現せず、次年度に持ち越しとなったため、使用額に変更が生じた。
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