研究課題/領域番号 |
20K13389
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
石巻 実穂 早稲田大学, 法学学術院, その他(招聘研究員) (10822273)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 原因者負担原則 |
研究実績の概要 |
本研究は、原因者負担原則の規範としての存在意義を明らかにしようとするものである。 わが国の原因者負担原則を現状よりも強固な法規範として位置づけ、喫緊の環境問題への対処に備えることを目指す。最新の議論動向および喫緊の環境問題を見据えたうえで、原因者負担原則の規範としての強度およびその存在意義を明らかにし、原因者負担原則の、ひいては環境法上の基本原則一般の優位性を導き出すことが本研究の目的である。 令和4年度は、環境法上の喫緊の課題に対し原因者負担原則が果たしうる役割についての研究を実施した。具体的には、炭素回収貯留(CCS)および海洋ごみ問題に関する諸外国の問題状況を整理するとともに、ドイツにおける廃棄物処理制度、およびアメリカにおけるサプライチェーン上の自然資本にかかる法規制について調査を行った。これらの調査・研究からは、既に生じた環境負荷を除去しまたは将来的な環境負荷の発生を防ぐための措置として新たな技術を導入する際に、当該技術の利用が別の環境問題を生じさせることのないよう適切な安全規制を確保し、かつ、損害発生時の賠償制度を整備する場面、さらには、より広く環境負荷の少ない事業・商品・取組みを支援していくための社会的基盤を構築するといった場面において、責任主体の選択および責任の内容と限度の設定が特に重要となるということが改めて明らかとなった。これを踏まえ、原因者負担原則が実際の立法政策の過程においてどのような指針を提示しているものと解すべきかについて検討を開始した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は4年間で実施するものであり、3年目にあたる本年度は、研究実施計画上、喫緊の環境問題に対処するにあたり原因者負担原則が担う役割について研究することとなっていた。この点、研究実績の概要に示した通り、具体的な問題状況ごとに立法政策上の原因者負担原則の適用状況に関する考察を行ったことから、おおむね順調に進展しているものと評価できるように思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き、当初の計画通りに研究を進める。 令和5年度は最終年度となることから、これまでの研究成果を取りまとめ、わが国の原因者負担原則をより強固な規範として再構築することの可能性について結論を提示することを目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により出張やインタビュー調査等が実現せず、次年度に持ち越しとなったため、使用額に変更が生じた。
|