研究課題/領域番号 |
20K13391
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研究機関 | 神田外語大学 |
研究代表者 |
磯田 沙織 神田外語大学, 外国語学部, 講師 (70812064)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 比較政治 / 大統領制 / 弾劾 / 大統領ー議会関係 |
研究実績の概要 |
本年度は海外実地調査を行う予定であったが、昨年度に続き新型コロナウィルス感染症拡大が収束せず、海外渡航が制限されたため、不可能となった。しかし、先行研究やインターネット上のデータの収集、オンラインでのミーティング等の代替手段を通じて研究を進めることで、一定の成果を上げることができた。 第一に、研究対象国の一つであるベネズエラ在住の市民活動家等に対し、オンライン上で定期的にインタビューを実施することで、地方選挙を含めた政治経済情勢に関して情報を収集した。 第二に、日本の政治研究者等との意見交換を通じて、分析枠組みを再構築した。まず、国会議員の再選制限が大統領弾劾に及ぼす影響に関し先行研究を通じて分析をまとめ、6月に日本比較政治学会で報告した。次に、ラテンアメリカ政治研究者と定期的にオンラインの勉強会を実施した。これらの機会で得たコメントに基づき、分析枠組みの精緻化に取り組んだ。 第三に、研究対象国の大学主催のセミナーにおいて情報収集を行った。まず、研究対象国の一つであるパラグアイの国立アスンシオン大学および駐日パラグアイ大使館が12月に共催した特別セミナーに参加し、日本とパラグアイの政治システムの違いから生じる国家元首の罷免方法の違い等に関して講演を行った。次に、もう一つの研究対象国であるペルーの国立サンマルコス大学が2月に主催した特別セミナーに参加し、日本とペルーの政党システムの違いから生じる国家元首と議会の関係性の違い等に関して講演を行った。これらの機会を利用し、オンライン上で様々な研究者や外交官等と意見交換の機会を得ることで、現地の政治経済情勢に関しても情報収集を行えた。また、現地の大学とのネットワークを拡大し、現地調査が再開された際の協力体制を確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は新型コロナウィルスの蔓延が収束せず、二年連続で現地調査のための海外渡航ができなかった。しかし、オンライン上のインタビューや講演会等の機会を通じて、研究者等との意見交換の機会を得ることで、計画通りではないものの一定の成果を上げることができた。 第一に、現地調査の代替手段としてオンライン上のインタビュー調査を実施したことで、日本国内からはアクセスできない情報を収集できた。特に、オンライン上であまり情報が公開されていないベネズエラの社会活動家等に対するインタビュー調査を通じて、現地調査が再開された際に必要となる前提情報を入手することに成功した。 第二に、オンライン上での研究発表の機会を増やしたことで、幅広い専門領域の研究者や外交官等と意見交換することができた。日本の研究者からは、研究対象国に留まらない一般化の可能性に関して重要な示唆を頂いたことで、分析枠組みを見直すことが可能となった。また、国際学会においてラテンアメリカを専門とするアジアおよびラテンアメリカ人研究者と活発な議論を交わしたことで、日本では入手不可能な情報に触れ、事例分析を進めることに繋がった。 しかし、当初予定していた研究対象国における政治家等に対するインタビュー調査を実施できなかったため、計画よりやや遅れる状態となった。
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今後の研究の推進方策 |
今後も新型コロナウィルスの感染状況を注視しながら、海外渡航の可能性について情報収集を進める。もし2022年度も新たな変異株の流行等により海外渡航が困難となる場合、オンライン上のインタビュー調査に応じてもらえるよう、政治家等の当事者への働きかけを強化する。他方、研究対象国においてワクチン接種が進み、海外渡航が可能となる場合、以下3点に絞って現地での実地調査に取り組む予定である。 第一に、新型コロナウィルスの感染拡大だけでなく治安情勢の悪化が見込まれるベネズエラでは、引き続きオンライン上のインタビュー調査を継続する。他方、オンライン上だけでなく、ベネズエラ国外に滞在中のベネズエラ人政治家へのアポイントを申し入れ、対面でのインタビュー調査の実施に向けて働きかける。また、政権派と反政権派の対立が激化しているため、異なる立場から政治活動に取り組む議員達とのコンタクトを模索することで、多角的な視点からの情報収集に取り組む。 第二に、治安情勢が相対的に安定しているペルーおよびパラグアイでは、国立図書館や研究所付属図書館等において文献収集を進める他、複数の世論調査会社を訪問し、分析担当者と意見交換をする。並行して、これまでにオンライン上でのインタビュー調査を行ってきた政治家に対して対面の面談を実施し、最新の情報を収集する。 第三に、現地で収集した情報をまとめ、国際学会や研究対象国の大学で研究成果を発表する。これまでは国内で入手可能な情報のみに基づき研究を進めてきたため、研究対象国で入手する文献およびインタビュー調査をまとめ、その内容に関して現地の研究者と意見交換することで、これまでの研究計画の遅れを挽回する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は新型コロナウィルスの感染拡大が収束せず、海外実地調査が実施できなかったため、往復航空券や宿泊費等として計上していた旅費、インタビュー調査で必要となるICレコーダー等の物品、および現地調査中のアシスタントの雇用費として計上していた人件費を利用しなかった。また、国内外の学会もオンライン開催となったため、旅費を利用しなかった。 2022度は、幾つかの国内学会が対面開催の方針を決めている他、ワクチン接種が進み、海外渡航の可能性が高くなっているため、前年度までに計画していた海外調査を実施し、旅費および人件費を利用する予定である。これに伴い、調査のために必要な物品を購入する。
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