研究課題/領域番号 |
20K13391
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研究機関 | 神田外語大学 |
研究代表者 |
磯田 沙織 神田外語大学, 外国語学部, 講師 (70812064)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 比較政治 / 大統領制 / 弾劾 / 大統領ー議会関係 / 南米諸国 |
研究実績の概要 |
令和4年度はパンデミックの影響が緩和されたものの、政治情勢および治安情勢の著しい不安定化により、計画当初に設定した研究課題の遂行に支障をきたした。しかし、国内での理論構築に取り組み、また後半は幾つかの調査先での受入が可能となったため、以下の進展が見られ、これまでの計画の遅れを少し取り戻すことができた。 第一に、弾劾裁判に際した各国会議員の投票行動について、各政党内で党議拘束が機能するために必要な要素の一つである選挙時の支援体制に関する理論構築を進め、その成果を国際学会で共同発表した。パンデミックの影響によりオンライン開催となったが、各国のラテンアメリカ政治の専門家とオンライン上で意見交換をし、理論の修正に取り組んだ。報告ペーパーは何度か推敲を重ね、国際学会ジャーナルに共同で投稿した。 第二に、研究対象国のうち2か国を訪問し、インタビュー調査に取り組んだ。以前よりオンライン講演会を通じて意見交換を続けてきたペルー・サンマルコス大学、パラグアイ・アスンシオン大学に加え、ペルー問題研究所やペルー・カトリカ大学も訪問し、研究者と意見交換した。ペルーでは、こうした研究者から政策立案に携わった元国家公務員等を紹介され、情報収集に取り組んだ。パラグアイでは、既存の人的ネットワークを生かし、主要政党の党員等からの情報収集を進めた。 第三に、治安情勢の悪化により訪問が叶わなかったベネズエラでは、令和3年度同様、市民活動家へのオンライン上でのインタビュー調査を継続した。このインタビュー調査を通じて、弾劾裁判が成立しない背景や、大統領罷免請求の障壁になっている課題について情報収集できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和4年度後半からは調査先での受け入れが可能となったものの、ベネズエラでは政情不安による治安の悪化は改善せず、これに加えてインターネットがさらに不安定になったことから、調査相手と音信不通になることが度々あった。このため、情報収集をできたものの、計画通りには進まなかった。また、ペルーでは現地調査前に大統領弾劾が発生し、研究者や政党関係者が対応に追われていたため、計画していた全ての人物にインタビュー調査を実施することが叶わなかった。 しかし、ペルーでの政治的混乱状況は落ち着きを見せており、またパラグアイでは順調に現地調査に取り組めていることから、期間を延長する令和5年度には遅れを取り戻せると見込んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間の延長を許可された令和5年度には、研究成果を公開するため、国際学会のジャーナル等に掲載できるよう、理論構築と事例分析を完成させる予定である。パンデミックの影響で現地調査に基づく事例分析が遅れていたが、本年度後半から現地調査を開始できたため、事例分析に必要なデータをほぼ入手することができている。同時に、海外から研究者を招聘し、あるいは現地調査中に共同研究会を開催し、研究成果の発信を計画している。なお、今後の治安情勢の悪化により渡航が難しくなる場合は、パンデミック期間同様にオンライン上の研究会に切り替えることも検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
パンデミックの影響により、計画当初計上していた令和2年度および令和3年度の現地調査費用を一切使用せず、令和4年度も年度後半から現地調査費用を使用した。このため、令和4年度は令和2年度および令和3年度の繰越金を完全に使用できず、次年度使用額が発生した。 令和5年度は、現地調査、国際学会、共同研究会等のための渡航費に加え、研究アシスタントの雇用、文献収集に使用することを計画している。
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