令和5年度は、パンデミックや治安情勢の改善により、これまで実施できなかった現地調査を実現することで、大統領弾劾成立条件に関する理論研究および実証研究を融合させた分析に取り組んだ。また、政治情勢および治安情勢の著しい不安定化が継続された研究対象国については、従来通りオンラインのインタビュー調査に切り替え、現地調査の代替とした。その結果、以下の進展が見られ、これまでの計画の遅れを取り戻すことができた。 第一に、令和4年度に大統領の弾劾が成立したペルーの事例分析を更に深め、大統領弾劾に関する論考をまとめた。同論考では、これまでに得られた国内外の研究者からの助言に基づき、弾劾プロセスの細分化をすすめ、グラフ化した。 第二に、大統領弾劾以降に大規模な抗議活動が発生していたペルーを訪問し、元国会議員、選挙管理委員会職員等から情報を収集し、サンマルコス大学、ペルー・カトリカ大学、ペルー問題研究所に所属する研究者との意見交換を通じて、実証研究の精緻化に取り組んだ。また、現地研究者との共同研究を促進するため、令和6年度のLatin American Studies Associationにおいて共同発表することとした。 第三に、これまでの研究成果を教育現場でも生かすため、アジア経済研究所の「現代ラテンアメリカ政治に関するテキストと教材の作成」に参加し、大統領弾劾に関する章の執筆を他の研究者と共同で進めた。同テキストは、日本でラテンアメリカ政治を学ぶ学部3年次以上を対象とした教科書として令和6年度中に公開される予定である。
|