研究課題/領域番号 |
20K13394
|
研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
佐藤 信 東京都立大学, 法学政治学研究科, 准教授 (70761419)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 55年体制 / 政治史 / 政党 / 社会党 / 革新 |
研究実績の概要 |
本研究はとりわけ有権者における認識と、議会政治における慣行に注目しながら、とりわけその一翼を荷った社会党の動向の解明を通じて政治構造の変容を明らかにし、「55年体制」の“体制”化の実態を析出しようとするものである。 初年度に当たる2020年度は元来、オーラル・ヒストリーを含む資料収集を中心としていた。ところが、研究体制の構築には一定程度の目処を付けることができたものの、COVID-19の感染拡大に伴って多くの史料閲覧が不可能となり、また感染防止の観点から(とりわけ高齢者を想定していた)インタビューは実施困難となった。従って、当初の予定はまったく実現できなかった。 ただし、これを奇禍としてさらに深化した研究を実施するべく、三つの課題に取り組んだ。 第一に、「55年体制」(ないし「1955年体制」)という分析概念の誕生・形成過程を詳細に分析した。政治学者としてこの概念を初めて用いたのは升味準之輔だが、彼自身「体制」と呼びながら流動的な状況の均衡として「体制」を描出していたこと、彼の「1955年体制」理解には実は変遷があり、「短い55年体制」と「長い55年体制」とでも呼ぶべき二つの「体制」理解が存在していたこと、彼が最終的に支持した前者が奇しくもこの研究課題が注目した社会党を重視したものであることを明らかにした。この成果は2021年度中に公刊予定である。 第二に、独立基盤形成支援(試行)の支援を得て、所属機関に大平正芳関係文書と三木武夫関係文書のデジタルデータベースを整備し、これらを利用して自民党側の政治構造の変容の分析を開始した。 第三に、やはり独立基盤形成支援(試行)の支援を得て、国内外の若手研究者をオンラインでつなぎ、最新の研究をフォローし、共有し、吟味するためのプラットフォーム、日本政治外交史ネットワークを立ち上げた。ミーティングは2021年4月から開始された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19の感染拡大により、当初予定していたインタビューや史料収集は一部を除きほとんど実施できなくなった。 「研究実績の概要」欄記載の通り、これを奇禍として予定していなかった方向に研究を深化させることができたが、当初の計画に照らせば「やや遅れている」と評価せざるをえないであろう。もっとも、2020年度を通じて理論面を詰めることができたことで、今後インタビューや史料に基づく研究の意義をより一層高めることができると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
COVID-19の感染拡大により実行できなかった計画を、追って確実に実施してゆく予定である。 もっとも、感染の収束は現時点では見通すことができず、また予算状況によっては検討するとしていた海外報告もその望みは高くない。従って、感染防止と安全確保に万全の注意を払いながら、可能なところから臨機応変にインタビューや史料収集を行うことに尽力したい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
前述の通り、COVID-19の感染拡大によって、予定していたインタビュー調査や史料収集が実施不可能となったことによる。今後、感染蔓延状況を見定めながら漸次予定通りに使用してゆく計画である。
|