研究実績の概要 |
2021年度は税制改革における専門家の役割を考察するため、先進諸国の主要なタックス・リポートを概観した。本研究の主要目的である日本とニュージーランドの比較からは、次の知見が得られた。第一に、専門家会議のトップである会長には、政治的中立が推奨されることである。会長が元政治家であったり、政権との距離が近い場合には、利害関係者から反発が生じやすい。第二に、専門家会議の委員数が少人数(5-10人程度)の場合、提言は理論的整合性を重視し、長期的指針となるものの実現しにくい。他方で委員数が大人数(20人以上)の場合は、実務的提言となりやすく実現性高い。第三に、政府からの諮問である。政府が専門家会議に包括的な諮問を行う場合には、専門知識を体系的に活用できる。反対に専門家への諮問が限定的である場合、専門知識の活用に制限がかかる。第四に、専門家会議での議論の透明性が高い場合、世論の支持を獲得しやすいことである。研究成果は以下の通りである。 (著書・論文)①田中雅子(2022)『増税の合意形成―連立政権時代の政党間競争と協調』日本評論社.②田中雅子(2021)「コロナ危機と財政政策」具裕珍編『東アジア藝文書院ブックレット』18号,63-84頁. (研究報告)③Masako Tanaka, “Comparative Politics of Tax Reform: The Role of Experts in Japan and New Zealand”UTokyo Center for Contemporary Japanese Studies, Early-career Scholar Forum, September 3,2021. ④田中雅子「税制審議組織の比較―日本とニュージーランドを中心に」日本政治学会、2021年9月25日.
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