本研究では、「満洲国」の民衆教化・動員団体の満洲国協和会をとりあげ、協和会の連合協議会を通じて満洲国住民が民意を表出し、その民意が政治に反映された状況を考察する。また、協和会の民意機関としての経験が、日本国内の政治体制の再編、大政翼賛会の成立と展開に影響を及ぼした状況も考察する。それを通じて①満洲国の政治と民意の関係を分析し、満洲国ひいては近代日本の植民地の政治史の研究を深める。②政治面における満洲国と日本国内との連動の一端を解明し、帝国日本の政治史を改めて把握する。 今年度では研究の廃止まで、地方連合協議会に関する日本国内の資料を収集・分析し、地方連合協議会の整備・運用を概観した。地方連合協議会は1935年から開催され始め、日中戦争開戦を期に活性化し、また、太平洋戦争開戦後、その運用が重視された。しかし、運用の実態について、地方連合協議会が形骸化し、あるいは「宣徳」(上意下達)の機関になった地域が多かったという仮説を立てた。中国側の資料を収集・分析し、以上の仮説を検証しながら、地方連合協議会の状況を掘り下げる予定であるが、研究廃止のため、実施できなかった。
|