本研究は,従来日本において十分に研究が行われてこなかった労働基準監督行政や労働基準監督官を対象として学術的な研究をおこなったという意義を有する.つまり,諸外国の研究状況と比較して,日本の労働基準監督行政については,ほとんど研究蓄積がなく,基礎的な研究も進んでいない状況にある.こうした状況において,労働基準監督行政について,歴史的沿革や諸外国との組織体制の違いなどを検証することには,今後当該行政分野の研究を進めていく上で必要不可欠な学術的作業である.本研究は,働き方が多様になるなかで労働者保護の在り方を再考する際に,労働基準監督行政体制を見直すための基盤を与えうる.
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