研究課題/領域番号 |
20K13405
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
永見 瑞木 大阪府立大学, 高等教育推進機構, 准教授 (10780629)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アメリカ独立 / 邦憲法 / 米仏比較 / 18世紀後半フランス / コンドルセ / フランス革命 |
研究実績の概要 |
本研究は18世紀後半のフランス政治思想の展開における同時代アメリカへの参照がもつ、政治学・政治思想史における意義を検討しようとするものである。本年度の中心的な作業は、一次・二次文献の収集と整理、先行研究の精査をおこなうことにより、今後の研究を進める上での骨格となる分析枠組みの形成にあった。言説の変化および論点の推移を捉えるために、対象時期を三つに分け(①1770~1780年代、②革命初期~テルミドール期、③総裁政府期)、本年度は主に①と②に焦点をあてて作業を進めた。 まずは全時期を通して重要な主題となる国制論からアプローチし、アメリカ各邦の憲法がどのように参照されたか、それは伝統的な英国国制解釈とどのような関係にあるか、などの具体的論点について検討すべく、ジャン=ニコラ・デムニエによる『体系百科全書』所収のアメリカ関連項目の分析に着手した。また「連邦制」をめぐる議論については、ネッケル『大国における執行権力について』におけるアメリカの連邦制とフランスの国制の比較論も視野に入れながら研究を進めている。 また本研究の対象とする時期はフランス革命期と重なるため、フランス革命史の近年の研究動向にも注意を払う必要があり、この分野では、ポスト「修正学派」の新たな動向の中で、フランス革命を環大西洋の言説空間に位置付けようとする研究に注目している。これに関し、オーストラリアの歴史家ピーター・マクフィによるフランス革命史の翻訳作業も進めた(こちらは2021年度内刊行を目指している)。 そのほか研究に関連する成果としては、教科書項目の執筆(ミネルヴァ書房刊行『よくわかる政治思想』の「コンドルセ」、「公教育」項目)、政治思想学会での国際シンポジウムのコメント報告・執筆などがあげられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は感染症の世界的な拡大により、国内外の図書館へのアクセスができず、文献・資料の収集も時間がかかるか不可能となるなど、研究文献へのアクセスがかなり制約を受けた。また予定していた海外渡航も見通しが立たず、延期となった。そのため本年度後半は、研究課題に関連する翻訳作業を優先して進めるなど、作業の優先順位を変更するなどの対応をおこなった。こうした事情から、研究全体の進捗状況にやや遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
感染症の世界的な拡大が収束する見通しがいまだ立たないため、文献・資料の調査や研究者との交流のための海外渡航はおそらく2021年度後半か2022年度に延期となる可能性が高い。だが一次文献などはフランス国立図書館の電子図書館(Gallica)においてアクセスできるものもあるため、引続きこちらを利用して文献の読み込みと分析をおこなう予定である。 また2021年度は研究課題に関わるテーマ(コンドルセの代表制論)での学会報告を予定しており、文献の分析の成果を論文の形にまとめていく作業にも着手したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は感染症の世界的拡大に見舞われ、予定していた海外渡航の見通しが立たず、結局本年度内に実施できなかったため、旅費に計上していた額が次年度使用額として生じた。次年度に予定している海外渡航の費用に充てる予定である。
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