研究課題/領域番号 |
20K13406
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研究機関 | 獨協大学 |
研究代表者 |
網谷 壮介 獨協大学, 法学部, 専任講師 (30838272)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | モンテスキュー / アプト / ユスティ |
研究実績の概要 |
社会思想史学会第45回大会において、モンテスキューの各国受容をテーマにしたセッションで、「啓蒙絶対君主制におけるモンテスキューの読まれ方:アプトとユスティに着目して 」と題した報告を行った。これはトマス・アプトとフォン・ユスティにおけるモンテスキューの批判的受容に着目し、啓蒙君主制のもとでモンテスキューの議論がいかなる影響力をもったのかを調査した研究である。アプトは、共和制においてのみ祖国愛が可能であるとするモンテスキューの議論を批判し、フリードリヒ2世治下の君主制においても祖国愛が可能であること、またその際にはモンテスキューが論じた君主制における名誉の原理は業績原理に接ぎ木されるべきことを主張する。他方、ユスティはモンテスキューの君主制・共和制・専制という政体区分を批判し、権力行使の様態を絶対権力と制限権力に区分した上で、政体を君主制・貴族制・民主制(絶対権力)と混合政体(制限権力)に区分する。権力の最高目的である公共の福祉の概念のなかには市民の自由・幸福が含まれるがゆえに、ユスティはモンテスキュー同様、イングランドの混合政体を称賛するが、他方で、絶対君主制であるプロイセンの現状を踏まえて、必ずしも絶対権力が専制に陥るわけではないと主張する。ユスティによれば、絶対権力は身分制的な中間権力による抑制ではなく(それは制限権力となる)、基本法の制定によって自己抑制されなければならない。この報告は、近代ドイツ法治国家におけるポリツァイ学の再検討を目指す本研究にとって、18世紀の君主制の政治思想が後の法治国家思想にどのように変容していくのかを見定める上で重要であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルスの感染拡大のため、予定していたドイツへの研究滞在が不可能となった。そのため、進捗状局は芳しくない。次年度も渡欧は困難であることが予想されるため、電子公開されている資料を中心に研究を進めていかざるをえない。
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今後の研究の推進方策 |
今後、19世紀の国家学においてポリツァイ学がどのような変化を遂げていくのかを、v.Mohlを中心に検討していくが、その際、前世紀のユスティやアッヘンヴァルといった思想家がどのように評価されているのかに注目する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大のため、ドイツに渡航することができず、本来旅費や現地での資料調達に計上していた予算を使用することができなかった。次年度も夏期には渡欧できない可能性があるが、遅くとも冬季には渡欧し、予定よりも長期間滞在して資料調査や研究報告などを行う予定であり、繰越分を含めた次年度分はこれに支出する。
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