研究課題/領域番号 |
20K13406
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研究機関 | 獨協大学 |
研究代表者 |
網谷 壮介 獨協大学, 法学部, 専任講師 (30838272)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ユスティ / カント / ポリツァイ学 / 家政学 |
研究実績の概要 |
本年度はヨハン・ゴットロープ・フォン・ユスティの著作を検討するとともに、イマヌエル・カントの正戦論についても検討を加えた。ユスティについては、前年度に引き続き、ポリツァイ学の内在的論理を『国家家政』(1755)や『ポリツァイ学の諸原則』(1756)、『国家の力と幸福の基礎』(1760-61)を中心に検討した。特に、自然法論との関係で、ユスティの幸福概念や資産概念がポリツァイ国家を基礎づけるものであることが確認された。さらに、ユスティの政治経済的思考を歴史的文脈に位置づけるにあたって、ジュースミルヒの自然神学的な人口論や、フランスでの商業貴族論争を背景に捉えることが重要であることもわかった。それに加えて、ユスティの歴史叙述にも目を向け、歴史的な内容を含む時事論考においてウィーン時代とプロイセン時代の叙述に差が見られること、また、国家の幸福という観点から七年戦争について否定的な見方を提示しているという点が確認できた。ヨーロッパ列強の国家形成の歴史がユスティのポリツァイ学認識にも影響を与えている。他方、カントについては、従来『人倫の形而上学』・「第一部・法論の形而上学的定礎」(1797)では、『永遠平和のために』(1795)とは異なり、正しい戦争がありうるとする正戦論的議論が見られると考えられてきたところ、それが両著作の議論の位相の違いに基づくものであって、体系的なカントの法論のなかでは特に矛盾すべきものではないこと、また、正戦論的思考はむしろ国家観の自然状態からの脱出への義務を各国家がもつことを正当化する論拠となっていることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ禍により、ドイツでの資料調査や研究滞在が今年度もできなかった。また、本務校でのオンライン・対面授業の切替えに伴う準備作業により、思うように研究に集中して取り組むことができなかった。本来、今年度は19世紀前半のドイツのポリツァイ学の調査をすすめるはずであったが、それは次年度に持ち越さざるを得なくなった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は夏季休暇を利用してドイツに滞在し、特にゲッティンゲン大学で資料調査を行い、18世紀末から19世紀初頭にかけてのポリツァイ学の文献を収集する必要がある。フランス革命後の知的変動のなかでポリツァイ学がどのように変容を被ったのかを研究する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により予定していたドイツへの渡航ができなかったため。来年度の旅費に合わせて使用する。
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