研究課題
若手研究
本研究はドイツ語圏における統治の学であるポリツァイ学を対象とするものである。特に、18世紀にオーストリアやプロイセンなどで活動した思想家ヨハン・ハインリヒ・ゴットロープ・フォン・ユスティの統治思想や歴史叙述について研究を深めることができた。特にユスティがモンテスキューを受容しながらも独自の論理によって絶対君主制を肯定したこと、同時代の七年戦争やドイツの経済状況に対して歴史叙述を通じた介入を行っていたことを明らかにすることができた。
政治思想史
絶対主義国家内部で誕生した統治の学であるポリツァイ学は、19世紀前半のドイツ語圏において自由主義・法治国家思想が勃興するととともに衰退したと考えられてきた。しかし、ポリツァイ学と自由主義ないし法治国家原理を調和させる試みも存在した。ユスティの統治思想を明らかにした本研究は、19世紀にいたるポリツァイ学の持続と変容の過程を検討する土台となりうる。特にユスティの著作には、政府による介入か非介入かという二項対立を超えて、自由を可能にする介入というモーメントの片鱗が見いだせることがわかった。